Cypress Semiconductorは2月26日、40ピークツーピーク(Vpp)のノイズ耐性を持つ次世代タッチパネルコントローラ「Gen5 TrueTouch」を発表した。
スマートフォンなどのタッチパネル搭載端末では、付属の充電器以外にサードパーティ製の充電器や無線充電器などを用いるユーザーが多い。しかし、このようなメーカーが保証していない充電器に接続したままスマートフォンを操作すると、充電器からのノイズによりタッチパネルがうまく機能せず誤操作を起してしまうことがある。このような問題に対し、「顧客からは40Vppのノイズ耐性が求められていた。このレベルを実現できれば、どのような充電器に接続しても問題なく操作できるため、1つの開発の指標となっていた」(CypressのTrueTouch テクノロジ マーケティング担当 シニアディレクタであるJohn Carey氏)という。
今回の「Gen5 TrueTouch」では、薄型の0.5mmカバーレンズを実装した端末を最大22mm径のフィンガーサイズで操作した悪条件の想定において、1kHz~500kHzの周波数範囲で測定して、40Vppのノイズ耐性を達成している。充電器に対するノイズの印加は、タッチする径が大きけば大きいほど、システムに与える影響は大きい。これを22mm径に広げても誤動作しないようにした。さらに、充電器ノイズはディスプレイ側から入ってくる。これを0.5mmの薄型カバーレンズでも除去できるようにした。
一方、中小型ディスプレイにおいては、大画面化、高精細化、高画質化、薄型化が進んでいるのに加え、オンセルやインセル技術といったタッチパネルセンサをディスプレイに組み込む技術などが採用され始めている。「これらの技術革新の動きはセンサがよりノイズソースに近くなる傾向にあり、タッチパネルコントローラ側から見たら、高いノイズ除去性能で対応する必要があった」(日本サイプレスの代表取締役社長である山田正美氏)としている。なお、同じ条件で15Vppを超えるノイズ耐性を実現できる製品は同社以外、現状存在しないという。
15種類の携帯電話端末による検証に基づいたGen5 TrueTouchと競合製品とのノイズ耐性の比較。薄型の0.5mmカバーレンズを実装した端末を最大22mm径のフィンガーサイズで操作した想定において、サードパーティ製の充電器や無線充電器などを用いた環境で1kHz~500kHzの周波数範囲で測定したもの。Gen5では、40VPPを保証しているが、ほとんどの周波数で60VPPを達成している |
Gen5 TrueTouchにおけるノイズへの具体的な対策としては、駆動電圧を10V Txとすることで、競合製品よりSN比を3倍向上させた。また、受信チャネルごとに1つのA/Dコンバータ(ADC)を内蔵して高速スキャンを可能にした。スキャン時間を短縮することにより消費電流を低減できる。さらに、チャージャノイズのソースは低い周波数帯に集中するのに対し、500KHzと充電器ノイズから離れた周波数でスキャンするため、ノイズから受ける影響が小さい。また、RFの周波数から見た場合は低いため、タッチスクリーン駆動に最適となっている。さらに、寄生容量を大きいLCDに搭載しても駆動できるようにした。
また、狭帯域のシングルパススキャニングと高度なハードウェアDSPフィルタリングによって、10Vの駆動電圧と高い周波数でタッチスクリーンを駆動するアナログフロントエンドを新たに採用した。これにより、ノイズ耐性が向上し、インセルやオンセル、ノイズが多いディスプレイへのダイレクトラミネーションなど、薄型のディスプレイ内蔵スタックアップを実装できるようになった。これらにより、タッチに対する無反応や誤反応がなくなり、ジッタを0.5mm未満に低減し、さらに薄くスタイリッシュな製品が実現できるとしている。この他、高効率なMIPS/mWのARM Cortex-Mコアプロセッサを組み合わせており、120Hzのリフレッシュレートと、消費電力4.5μWのディープスリープモードを有する。
このように、ノイズ耐性が向上することで、タッチスクリーンパネルの組み立てにおいては、遮蔽体やエアギャップを必要とせず、さらに薄く安価に製造できるようになった。センサでは、これまでITOガラス/フィルムが使われてきたが、Ag/Cuといった新たな材料を用いてパターンを形成した新たなガラス/フィルム部材が普及することが見込まれている。このような動きに関しては、「タッチパネルのシート抵抗を低減できるので、コントローラへの負担が軽減できる。開発が進むことを歓迎する」(Carey氏)と述べた。
TrueTouchシリーズは優れた防水に有しており、すでにスマートフォンなどで採用実績もある。同一チップで自己静電容量センシングと相互静電容量センシングを実現する独自の機能と、IP-67適合防水機能の融合により、雨や結露、汗をかいた場合などの実生活環境でも防水性能を実現する。タッチスクリーン上の湿気による誤タッチを防止する防水機能、指が濡れていても正確にタッチを追跡するウェット指追跡、画面の水分を拭いた後、直ちにベースラインを再校正するなどといったアルゴリズムが搭載されている。
なお、パッケージは、28個のセンスI/Oを持つ5mm角の44ピンQFN 、33個のセンスI/Oを持つ5mm角の44ピンQFN、および36個のセンスI/Oを持つ6mm角の48ピンQFNで供給される予定。すでに主要顧客向けにサンプル出荷を開始しており、2013年第2四半期には主要顧客向けに量産を開始する予定。現在の対応サイズは5型以下だが、10.1型に半年後までに対応するとしている。