三菱電機は2月14日、パワー半導体素子をすべてSiCで構成したフルSiCパワー半導体モジュールの大容量化技術を開発し、定格電圧1200V・定格電流1200Aの検証用モジュールにて動作を実証したと発表した。これにより、大容量が求められるFA機器、昇降機、太陽光・風力発電システムなどの産業用途に向けてSiC製品を適用することが可能になったという。

パワー半導体素子の材料として近年、従来のSiに比べ約10倍の絶縁破壊強度を持ち、低電力損失化が可能で、冷却器の省略などが可能となるSiCへとシフトが進められている。

同社でもこれまで小・中容量のフルSiCパワー半導体モジュールの開発を行ってきたが、今回はSiCの適用範囲の拡大を目指すために大容量化技術を開発、SiC-MOSFpETとSiC-SBDを搭載した定格電圧1200V・定格電流1200Aとなる、2素子入りのパワー半導体モジュールを試作し、動作実験を行ったという。

フルSiCパワー半導体モジュールの大容量化には、電流の増加に伴って高速スイッチング時に瞬間的に発生する電圧が高くなることで電力損失が増加、素子が破損するという課題があった。今回、その課題を解決するために、内部構造の最適化を図ったことで、高速スイッチング時に発生する電圧をSiパワー半導体モジュールと同等に抑制することに成功、電力損失の低減と素子の破損回避を達成したという。

また、大容量化に向け、モジュール内部を2つのブロックに分けて並列化したが、並列間に流れる電流が不均一になると内部温度が不均一になり素子が破損する可能性があったことから、内部のチップ配置・主回路配線・制御配線の最適設計を行い、並列間に流れる電流を均等化することに成功。

さらに、大容量化によって、短絡時に大電流が流れ、素子が破損する可能性があることから、そうした大電流の抑制のために、MOSFETに電流センス機能を内蔵したことで短絡時に高速に素子を保護する技術を確立。これにより低抵抗素子の適用が可能となり、パワー半導体モジュールの電力損失を75%低減し、冷却器の大きさを半減できるようになったとする。

三菱電機が開発した定格電圧1200V・定格電流1200AのフルSiCパワー半導体モジュール