会社が解雇通知をするのをスタッフがリアルタイムでツイートした事件がちょっとした話題になっている。解雇を言い渡された1人であるソーシャルメディア担当のスタッフは、解雇後も企業アカウントにアクセスできる状態だったらしく、改めて企業のソーシャルメディア管理が不十分であることが明らかになった。

渦中の企業は、CD小売店大手の英HMV。不況が続く同社はDeloitteの元で事業再建を図っている最中だ。

そのHMVでインターンとして同社のTwitterを担当していた"Poppy Rose"は、1月31日に行われた人事発表をHMVの公式アカウントでライブツイートした。現在、Poppy Roseさんのツイートの一部は削除されているが、Twitterなどに出回っている画面のキャプチャからは、「全員が解雇されたHR(人事)からライブでツイート中! エキサイティング!」「(人事部の)60人以上が一気に解雇! HMVブランドを愛する忠実な社員が一度にクビに」「マーケティングディレクター(この人はクビになっていない)が"Twitterはどうやったら閉鎖できるのか?"と言っている」などのツイートが並んでいる。

これらのツイートに付いているハッシュタグ「hmvXFactorFiring」をたどると、「残念」「悲しい話だ」「お気の毒に、幸運を祈る」などのツイートが並ぶ。

Poppy Roseさんはその後、自分のアカウントで、「わたしたちは全員解雇された。グループ内で50人以上。事業をダメにした人はクビを免れている…万歳!」とつぶやいており、明らかに今回の解雇に不満だった様子だ。同時に、「hmvXFactorFiring」を付けたツイートについては、「謝罪します。でも、誰かが発言しないといけないと思った」「家族もローンもない私が一番(発言するのに)適任だと思った。もちろん、ソーシャルメディアを拒む人にソーシャルメディアの力を見せたいとも思った」とも述べている。

ツイート上で出ていた「HMVのツイートハイジャックでは?」という意見については、「私はこの2年間、HMVでTwitterとFacebookを担当していた唯一の人間だ。今日の午後、会社にパスワードを教えてくれと頼まれたとき喜んでそうした。新しいFacebook担当スタッフの設定をやってあげたし、管理者リストから自分を削除した。会社の命令に抵抗していない」と説明している。

前述のように、Poppy Roseさんが#hmvxfactorfiringを付けてHMVの公式アカウントでつぶやいたツイートは、削除されている。これに対しては、「すでに大量にリツイートされる前に元社員のツイートを削除できると思っているのか?」「ツイートを削除して状況を無視することで、何もなかったことにできるのか?」などのツイートがあり、少なくとも一部の反感をかったようだ。

この一件を報じたForbesの記事「Don't Fire An Employee And Leave Them In Charge Of The Corporate Twitter Account(企業のTwitterアカウントを担当するスタッフを、そのままにして解雇するな)」では、「雇用主はソーシャルメディアを運用している従業員を解雇する前に、ソーシャルメディアのアカウントを管理し、パスワードを変更し、アクセスを制限すべきだ」という教訓を導きだしている。

「HMVが、解雇すると決めた人に企業の公式ソーシャルメディアアカウントにアクセスできる状態にしていたことは、驚きだ」と記事は記す。実際、解雇の翌日もPoppy RoseさんはHMVの公式アカウントにアクセスできたようだ。ツイート上でHMVの公式アカウントに向けて、管理者リストから自分を削除する方法を伝えている。

一方、Poppy Roseさんに向けては、今後のキャリアに悪影響するのではという懸念もある。少なくともこの事件の前後でHMVの公式ツイッターのフォロワーは1万以上増えた。ソーシャルメディアのパワーを信じるPoppy Roseさんの"置き土産"といってよいのだろうか。

執筆時、HMVの公式ツイッターは2月1日付けのツイート「会社を去るスタッフの1人が、当然のことながら憤慨している。だがわれわれは健在だ。難しい時代にHMVへの支持をありがとう」を最後に、沈黙を保っている。