TANAKAホールディングスは1月10日、田中貴金属グループでボンディングワイヤ製造を手掛ける田中電子工業が、従来の1.5倍以上の信頼性を持つ銅製ワイヤ「CA-1」と、導電性を従来品より約60%向上させた銀製ワイヤ「SEB」を開発し、1月11日よりサンプル提供を開始することを発表した。

CA-1は、ベア銅製ワイヤの弱点であった信頼性を、従来の1.5倍以上に高めたベア銅製ワイヤ。175℃の高温下における故障率(抵抗値が20%上昇する割合)を試験した結果、従来のベア銅製ワイヤは800時間で故障率が0%から上昇し始めるが、同製品は1,200時間でも故障率が0%のままであり、従来の1.5倍以上となる高い信頼性が確認されたという。

また、99.99%の銅と微量の金属を最適な条件で合金化することで信頼性のほか、ステッチ接合のプロセスウィンドウが従来のベアタイプより約1.5倍広く、高い生産性を実現していること、ならびにボールの柔らかさを最適化したことによる、ICチップ上のアルミ電極を傷つけないこと、貴金属コーティングタイプと比べて、約20%のコストダウンが可能といった特長を有する。

半導体用ボンディングワイヤ市場は、金価格の高止まりから、金製ワイヤから銅製ワイヤへと代替が進んできているが、従来は主に信頼性の観点から、パソコンやスマートフォンなど汎用機器のICやLSIの配線材が中心となっていた。しかし、CA-1を用いることで、高い信頼性が求められる車載電子機器や産業用機器での金製ワイヤの置き換えが可能になり、要求性能を満たしつつ、製造コストの低減が可能になると同社では説明している。

一方のSEBは、従来品の銀製ワイヤ「SEA」比で、導電性を約60%向上させた銀製ワイヤ。SEAは、金製ワイヤに比べて約80%の貴金属地金コストダウンが可能で、接合性や生産性が金製ワイヤ並みに優れているなどという利点があった一方、導電性が金製ワイヤより低い(電気抵抗値が高い)という弱点があった。

SEBでは、こうした弱点を克服するため、電気抵抗値を高める原因であった合金組成をさらに改良を施しており、SEAの電気抵抗値が約5.2μΩ・cmであったのに対し、約3.3μΩ・cmと、金製ワイヤの電気抵抗値と同等レベルにまで改善することに成功している。

また、この導電性の改善に加え、金製ワイヤ並みにボールが柔らかいため、アルミ電極を傷つけない点や、金製ワイヤとほぼ同じ使用条件で充分な接着が可能、金製ワイヤよりも低コストといったSEAの特長を引き継いでおり、あらゆる電子機器のICやLSIの配線材として使用できるようになったという。

なお、同社ではこうした金製ワイヤからの代替が可能な製品のサンプル提供を通じて、顧客のニーズに合わせた代替材料の開発強化を図ることで、2013年春には量産化を目指すとしている。

左が銅製ワイヤ「CA-1」、右が銀製ワイヤ「SEB」