IBMは12月10日(米国時間)、未来のコンピューティングの実現に向けた電気信号の代わりに光パルスを使用した情報伝送に関する成果について発表した。

同成果の詳細は12月10日(米国時間)より米サンフランシスコにて開催されている電子素子に関する国際学会「IEEE International Electron Devices Meeting(IEDM 2012)」にて、同社のSolomon Assefa博士が「A 90nm CMOS Integrated Nano-Photonics Technology for 25Gbps WDM Optical Communications Applications」と題した論文として発表した。

シリコン・ナノフォトニクスは、光パルスを通信に活用することで、サーバや大規模データセンター、スーパーコンピュータに搭載されているコンピュータチップ間で大量のデータの高速伝送を行うための高速ネットワークを提供することを可能とする技術。光ファイバでシステムやチップ間を接続することで、光パルス経由でテラバイト単位のデータを転送することが可能であり、ビッグデータに関する課題に対する1つの解をもたらすものと期待されている。

今回同社は、2010年に発表した初期の概念実証を元に、大量生産を行うファウンドリへのシリコン・ナノフォトニクス技術の移行に関する主要な課題の解決を行った。実際に自社の高性能90nm CMOS製造ラインにいくつかの処理モジュールを追加することで、波長分割マルチプレクサ、変調器、検出器などの多種多様なシリコン・ナノフォトニクス部品をCMOS集積回路の横に隣り合わせに集積することに成功。これにより、単一チップ光通信トランシーバを従来の半導体工程で製造することが可能になるため、従来アプローチに比べて大幅なコスト削減をもらたらすことが可能になると同社では説明する。

また、実際に測定を行った結果、1チャンネルあたり25Gbpsのデータ転送速度を上回るトランシーバであることが実証された。さらに、小型オン・チップ波長分割マルチプレクサを活用し、複数の並列光データ・ストリームを1つの光ファイバに送り込むことができることから、この大量データ・ストリームの多重送信により、遠隔地にあるコンピュータ・システム間でテラバイト単位のデータを伝送することができる光通信のスケーリングが可能になるという。

IBMが作成したシリコン・ナノフォトニクスチップ。光配線と電気配線を同一チップ上に形成した。青色の線が高速な光信号を送信する光導波路。黄色の線が電気信号を送信するための銅配線