大阪市立大学は10月31日、カネカと共同で、「還元型コエンザイムQ10(還元型CoQ10)」に、原因不明の疲労や倦怠感などの症状が長期に続く「慢性疲労症候群」患者に対して一部症状の改善効果があることをデータを取って検証したと発表した。
成果は、大阪市立大 医学研究科の渡辺恭良特任教授(理化学研究所分子イメージング科学研究センター センター長兼務)を中心とする疲労研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、11月8日~11日にスペイン・セビリアにて開催される「第7回国際コエンザイムQ10学会」で報告される予定だ。
なお慢性疲労症候群とは、ある日突然原因不明の激しい全身倦怠感に襲われ、それ以降強度の疲労感と共に微熱、頭痛、脱力感や、思考力の障害、抑うつなどの症状が長期にわたって続くため、健全な社会生活が送れなくなるという疾患だ。現在、有効な治療方法が見つかっていない。
今回の試験は、慢性疲労症候群患者20名(男性5名、女性15名、平均年齢36.8歳)に対して、還元型CoQ10を1日150mgずつ2カ月間投与し、投与前と投与終了時の変化を疲労・睡眠・うつ症状に関する自覚的症状の得点、酸化ストレス・抗酸化力、計算課題により評価した。
その結果、血中のCoQ10濃度の上昇が、うつ症状の改善、睡眠時間の延長、計算課題の正答率の増加と有意に関連があることが明らかとなったのである。また、酸化ストレスは、血中の CoQ10濃度の上昇につれて減少することも明らかになった。酸化ストレスやエネルギー産生の低下は、慢性疲労症候群等の疾患に係るメカニズムとして注目されているところである。
ちなみにCoQ10には酸化型と還元型があるが、体内では大部分が還元型として存在。エネルギー産生賦活や抗酸化作用など、細胞が正常に機能する上で必須の作用を発揮していると考えられている。
従来からの酸化型が機能を発揮するためには、体内で還元型に変換される必要があるが、最近の研究では、体内での変換力は加齢や病気などによって低下することがわかってきたところだ。