芸術の秋が到来しました。週末を利用して、アートの旅に出てみてはいかがでしょうか?

近年、ランドスケープを活かした美術館や有名建築家によるデザインの美術館など、建築物としても見応えのある美術館が増えています。今回はそんな日本各地の美術館の中から、「建築」をキーワードに現代アートの美術館5選を紹介します。

十和田市現代美術館

青森県十和田市の官庁街通りに2008年にオープンした現代美術館。オノ・ヨーコやスゥ・ドーホー、ロン・ミュエクら国内外で活躍する21名のアーティストが同美術館のために新たに制作した「コミッションワーク」22点が常設展示されている。「アートのための家」をテーマに建築家・西沢立衛によって設計された展示室は、大小16の独立した箱形の建物として敷地内に点在し、作品と空間の親和性の高さがこの美術館の一番の特徴と言える。チケット売り場の床にカラフルなビニールテープを貼りつめたジム・ランビーのインスタレーションや、休憩スペースの床一面に施されたマイケル・リンのペインティングなど、この空間でしか見ることのできない作品に出会える。

金沢21世紀美術館

2004年のオープン以来、金沢市の新たな観光名所として注目を集めている現代美術館。妹島和世+西沢立衛の建築ユニット「SANAA」の設計による円形の建物は、上空から見ると大きな円盤のよう。外周は開放的なガラス張りになっており、ほぼ東西南北の4カ所に設けられたエントランスが館内を自由に行き交う人々の流れを生む。プールの底に沈みながら水面を見上げる感覚を味わえる『スイミング・プール』(レアンドロ・エルリッヒ)や、一部が正方形に切り取られた天井から空の移り変わる色を鑑賞する『ブルー・プラネット・スカイ』(ジェームズ・タレル)など、空間そのものを味わう作品が人気。

豊田市美術館

愛知県豊田市の中心市街地を見下ろす小高い丘の上に、1995年にオープンした近現代美術館。ユニークな切り口での企画展示に定評があるほか、訪れる人を惹き付けるのは美術館建築そのものの美しさ。設計はMoMA(ニューヨーク近代美術館)の増改築も手掛けた美術館づくりの名手、谷口吉生。水平・垂直のラインによる構成美と、余計なものを削ぎ落したミニマルな様式は、建築好きにはたまらないモダニズム様式の極み。芝生の広がる周囲のランドスケープデザインはピーター・ウォーカーによるもの。幾何学的な植栽や石畳のリズムが建築を際立たせている。

地中美術館

瀬戸内海に浮かぶ香川県の離島「直島」にある、現代建築の巨匠・安藤忠雄設計による美術館。クロード・モネ、ウォルター・デ・マリア、ジェームズ・タレルの3名のアーティストの作品を恒久展示するために構想を練られた館内は、まさに空間全体が来場者の感覚に訴えかけてくるアートだ。 特にクロード・モネの『睡蓮』を自然光のみで鑑賞できる展示室は秀逸。床には2cm各の白い大理石が敷き詰められており、心なしか他の展示室よりもひやりとした静寂な空気が漂う。夕刻、薄暗い光の中浮かび上がる睡蓮と向き合えば、東京の混雑した美術館で見る「モネ」とは全く違った感動を味わえるはず。

犬島アートプロジェクト 精錬所

瀬戸内海に浮かぶ離島「犬島」に遺された銅精錬所の廃墟を利用した、アーティスト・柳幸典と建築家・三分一博志によるアートプロジェクト。半分崩れ落ちた煙突や、ツタの絡む風化した煉瓦など、遺構の姿をそのままに保存している。海岸沿いに佇む姿は異様な存在感を放ち、さながら要塞のよう。精錬所では、煙突の構造と地熱の働きを利用し、機械空調を一切使用せずに館内の空気を循環させている。照明も回廊から差し込む自然光のみで、訪れた日の天候によって作品の見え方も違ってくる。温度・湿度・明るさを全て管理され、閉じられた空間であることが当たり前だった従来の美術館へのアンチテーゼでもある。

上記で紹介した5つの美術館のように、近年では展示作品の為に構想から練ってデザインされた美術館や、建築物そのものをアートプロジェクトとして定義する美術館も増えてきています。単なる、アートの保存箱としてではなく、作品空間の一部へと進化しつつある現代美術館。建築空間の美しさや面白さも満喫しながら鑑賞したいですね。

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