NHKと長岡技術科学大学は5月18日、画素ピッチ1μmの高精細な空間光変調器を開発したと発表した。

今回NHKと長岡技術科学大学が開発した画素ピッチ1μmの空間光変調器。一次元アレイ構造(画素数10)で磁性薄膜と非磁性薄膜の多層構造を採用した、スピン注入磁化反転技術と磁気光学効果を利用した新たな電流制御型デバイスとなる

電子ホログラフィでは視域角(立体像を鑑賞できる範囲)の拡大が重要な課題となる。視域角を広くするためには、空間光変調器の画素ピッチを細かくする必要があるが、これまでの空間光変調器の最小画素ピッチは4.8μmで、視域角6度の範囲(光の波長530nmの場合)しか表示できなかった。

電子ホログラフィの基本システム。電子ホログラフィは、立体映像情報を入力系から伝送系・表示系まで電気信号として扱う技術。NHKでは、将来の立体テレビを実現する技術の1つとして電子ホログラフフィの研究開発を進めている。インテグラル立体テレビ用カメラで撮影した立体映像情報をホログラフィ情報に電気的に変換することで、電子ホログラフィによる立体動画表示が実現できる。電子ホログラフィの表示系には、立体映像を再生するためのデバイスとして空間光変調器が用いられる

今回、研究チームは画素ピッチを1μmへと微細化することで、視域角の拡大を実現し、従来の5倍となる視域角30度を実現した。また、各画素を10nsオーダーで駆動できるスピン注入磁化反転技術を採用し、電子ホログラフィによる立体動画表示に必要となる基本動作(空間光変調器による光の状態の高速制御、および固定ホログラムパターンによる立体静止画表示)の確認に成功しており、研究チームでは、そこに物体があるように思える自然な立体動画を表示可能な電子ホログラフィの実現に向けて大きく前進したとコメントしている。

視域角と画素ピッチの関係

なお、同技術は、5月24日より開催される放送技術研究所の一般公開で見ることが可能である。