NVIDIA GPU Technical Conference 2012(GTC 2012)の本会議は、Jen-Hsun Huang CEOの基調講演で始まった。
NVIDIAのGPUプログラミング言語であるCUDAは、2008年には15万ダウンロードであったが、それが2012年には150万ダウンロードと10倍に増加し、NVIDIA GPUを使うスパコンは2008年には1台であったものが、2012年には35台に増加した。また、この期間に、CUDAを教える大学は60から560になり、CUDAに関係する学術論文は4,000から22,500になったと述べて、CUDAの普及ぶりをアピールした。
続いて、同社のKepler GPUについて、レイトレースと流体シミュレーションを組み合わせたデモを見せて、その計算とグラフィックス能力を印象付けた。そして、Keplerの第1の特徴は、192個のCUDAコアをまとめたSMXの採用で、これと併せて回路レベルからアーキテクチャレベルまでの各種の改善を行うことにより、現世代のFermi GPUに比べて3倍のエネルギー効率を実現したとアピールした。また、第2、第3の特徴として、CPUから最大32のコマンド列を受け入れるHyper-Q、GPUで実行中のKernelから別のKernelの呼び出しを可能としてダイナミックにフレキシブルな並列実行を可能とするDynamic Parallelismをサポートしていることを明らかにした。
そして、KeplerアーキテクチャのGPUを使用するグラフィックス向けのTesla K10とTesla K20という製品を発表した。K10はイメージングなどの単精度浮動小数点計算で良い用途向けで、Fermi製品と比べて3倍の単精度演算性能と1.8倍のメモリバンド幅であることが発表された。また、K20は科学技術計算向けで、3倍の倍精度浮動小数演算性能を有し、Hyper-QやDynamic Parallelismをサポートしている。なお、K10は即時発売であるが、K20の発売は今年のQ4となると述べられた。
Tesla K20の発表はある程度予想されていたのであるが、それに続いて発表されたKepler GPUでの仮想化のサポートと、クラウドGPUの発表は衝撃的であった。Keplerは既発表のGK104を含めて仮想化をサポートしていると発表された。そして、このGPUをクラウドのサーバに実装し、仮想化を使って複数のGPUに見せ、画面はVDIを使って携帯端末などに送る。
このようにすると、高性能なGPUを持っていない端末でもハイエンドグラフィックスの画面を表示することができる。デモではCITIRXのXenDesktopを使い、XenDesktopレシーバをインストールした携帯端末でレイトレースした画像を表示したり、Industrial Light & Magicのサーバに格納されている数10TB級の映画画面を視点を変えたり、一部を編集したりして見せていた。
NVIDIAは、このGPUを使うクラウドサービスをNVIDIA VGXと呼んでいる。そして、1台のサーバで100画面を処理しているというデモを見せた。
また、GAIKAIのテクノロジで、3Dゲームをサーバ側のCPUとGPUで実行し、端末で操作を行うというデモを見せた。ゲームではプレイヤーの操作への応答速度が問題であるが、ゲームコンソールに比べてKeplerの速度が速いことと、GPUの描画とCPUでのエンコードやストリーミングを並列処理するなどにより、ゲームコンソールと同等の応答性を実現しているという。このクラウドでゲームを提供する機能をGeForce GRIDと呼んでいる。
端末側にはH.264のデコーダがあればよいとのことであり、ゲーム提供会社がこのようなシステムを使用するようになると、消費電力の制約が厳しいスマホなどでも3Dバリバリのゲームが楽しめることになる。そして、NVIDIAにとっては、新しいハイエンドGPUのマーケットが開けることになる。