映画『チャーリーズ・エンジェル』や『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル 』、『ターミネーター4』などのアクション映画の監督として知られるマックG監督の最新アクション映画『Black & White/ブラック & ホワイト』が公開された。本作について、「色々な作品のオマージュを詰め込んだオリジナル作品だ」と語るマックG監督に製作秘話を聞いた。

マックG
ミシガン州カラマズー生まれ。カリフォルニア大学卒業後、音楽会社のカメラマンとしてキャリアをスタート。その後、サブライムなどのアーティストのミュージック・ビデオを監督。映画『チャーリーズ・エンジェル』(2000年)で長編映画の監督デビューを果たす。これまでに『チャーリーズ・エンジェル』、『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル』(2003年)、『ターミネーター4』(2009年)などの監督を務めている

――まず、本作の制作期間を教えて下さい。

マックG監督「撮影準備に4カ月、実際の撮影に4カ月、ポストプロダクションに6カ月で、制作期間としては約1年半ですね。これは映画の制作期間としては通常の長さです」

――これまでに『チャーリーズ・エンジェル』や『ターミネーター4』などの監督を務めてきたわけですが、アクション映画を製作する際にこだわっていることはありますか?

マックG監督「長まわしのシーンを必ず入れるということですね。それが僕の撮影スタイルだと思っています。これはマーティン・スコセッシ監督やアルフレッド・ヒッチコック監督に影響されたことです。『ターミネーター4』のときは冒頭のシーンに長回しを利用しましたね」

映画『Black & White/ブラック & ホワイト』

FDR(クリス・パイン)とタック(トム・ハーディ)はCIAの諜報員。仕事でタッグを組み親友でもあるふたりはある日、同じ女性に恋していることに気づく。ひとりの女性をめぐり、激しくぶつかり合うふたり。三角関係のゆくえは……

――『ミッション:インポッシブル』や『007』シリーズなど、これまでに様々なスパイ映画が制作されてきたわけですが、本作を作るにあたり、そういった過去のスパイ映画を意識したことはありましたか。

マックG監督「ジェームズ・ボンドのすべての映画とジェイソン・ボーンの映画、『ミッション:インポッシブル』の全作、そういったものに影響されていると思います。ただ、これらの映画では、彼らが自宅でどういうことをしているかということは絶対に描かれませんよね? ですから、僕は本作では仕事の現場を描きながら、スパイが自宅に戻ったらどういうことをやるのか、また恋愛を本気でするとどういう風になってしまうのかということを描きたいと思いました。それがこの映画のポイントと言っても過言ではありません」

――近年の作品では多くのCGを使うことが当たり前となっていますが、CGを利用するときに監督が注意している点を教えて下さい。

マックG監督「僕のCGの使い方としては、なるべく気付かれないことが大切だと思っています。実写を何ショットか入れてその間にCGショットをいくつか入れ、また実写に戻るというミックスが必要だと考えています。それによって、CGに説得力が出ますし、説得力のある世界観を作り上げられ、映画全体が楽しめると考えています」

――CGに注目が集まるような作品もありますよね。

マックG監督「もちろん『アバター』のようなひとつの世界を作り上げるCGも好きです。ですが、それは僕のスタイルではないと思っています。僕のスタイルというのは、現実感のある、リアリティべースのCGだと考えています。例えばターミネーターでもそうですし、チャーリーズエンジェルでは実際にああいった女の子たちが戦っているということで説得力のある映像を作りたいと思っていました。今後も、そういったリアリティベースのCGを作っていきたいと考えています」

――映像技術という点では3D映像に関して、どのような意見をお持ちですか。

マックG監督「僕は3D技術が大好きです。ただ3D技術を生かすも殺すもその題材だと思っています。なので、3Dにぴったりな題材にめぐり合えば、その世界を3Dで作り上げていきたいですし、それを楽しみにしています」

――どういった作品であれば3Dにチャレンジしたいと思いますか。

マックG監督「やはりサイエンスフィクションだと思います。現にひとつ企画があって、映画になりえる作品を温めているんですけど、それは子供のロボットの話なんです。このロボットは自分がロボットだということを認識していません。で、自分のお父さん(自分を作り上げた科学者)のことを本当のお父さんだと信じている。といったピノキオ風な物語なんですけど、こういった題材は3Dでもいけるかなと考えているところです」

――監督は音楽制作会社のカメラマンとしてキャリアをスタートしているわけですが、最初から映画監督になりたかったのですか。

マックG監督「実は、僕ははじめスチールカメラマンだったんです。で、その後バンドに携わるようになり、そこから自然とミュージックビデオに触れるようになりました。で、実際にミュージックビデオを作るようになって、とても"監督"という職業に興味をもつようになったわけです」

――スチールカメラマン、PV監督を経て、映画監督になったというこれまでのキャリアが今の作品制作に大きな影響を与えていると。

マックG監督「はい、大きな影響を与えていると思います。なぜなら僕は常に音楽と映像の融合に興味をもっていて、それを実現したいと思っています。だからこそ、僕のプロダクション会社は"ワンダーランド・サウンド・アンド・ヴィジョン"という名前なのです」

――PV制作と映画制作には大きな違いはありますか。

マックG監督「まったく違うメディアだと僕は思っています。だけれどもPV制作は映画作りの素晴らしいトレーニングになると思っています。僕の尊敬する監督であるスパイク・ジョーンズやマイケル・ベイ、デヴィッド・フィンチャーなどはすべてPV監督出身の方です」

――最後に、本作について特に注目してほしい映像表現があれば教えて下さい。

マックG監督「映像表現でいえば、ふたつの長まわしのショットですね。ひとつはナイトクラブにFDR(クリス・パイン)が女性を連れていくシーンなんですが、あのショットは映画『グッドフェローズ』に対するオマージュでもあるんです。しかし、そういった長まわしショットももさることながら僕が1番観客の方々に楽しんでもらいたいのは、この作品に入っている様々な過去の作品を彷彿させるショットです。様々な作品を彷彿させつつも、作品全体を通して見るとまったく違うオリジナルな作品だと観客に思ってもらいたいと思いながら制作したので、それが伝わったら嬉しいですね」

映画『Black & White/ブラック & ホワイト』はTOHOシネマズ 日劇ほか全国公開中。

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