京都大学の正高信男 霊長類研究所教授らの研究チームは3月8日、60人の29~30歳の健康な独身女性を対象に生理後5日(卵胞期)、13日(排卵期)、25日(黄体期)にそれぞれ8枚の花の写真と1枚の蛇の写真を同時にみせ、その中から蛇の写真を正しくできるだけ迅速にみつけだすという視覚探索課題の実験をおこない、その成績を比較する実験を行った結果、黄体期には卵胞期、排卵期にくらべ、蛇の発見が早くなることを確認したことを発表した。同成果の詳細は3月8日付けの「Scientific Reports」に掲載された。
閉経前の成人女性の大多数は排卵後の生理が近づく時期になると、多少なりとも気分が落ち込んだり、鬱になったりすることは以前からよく知られており、欧米ではPMS(前メンス症候群)という診断名が与えられている。しかし、これまでその判断は本人への質問紙による、主観的な気分の表現の聞き取りにとどまっており、気分の変化を客観的にとらえる試みはほぼ行われてこなかった。
今回の検証では、8枚の花の写真と1枚の蛇の写真を同時にみせ、その中から蛇の写真を見つけ出すまでの時間を測定したわけだが、その逆の8枚の蛇の写真と1枚の花の写真を同時にみせるという実験も同時に行っており、こちらの場合はいずれの時期においても、花の写真を見つけ出す成績にほとんど変化がなかったという。
この結果から、同研究チームでは、嫌悪刺激に対する感受性だけが生理前に特異的に亢進するものとの考えに至ったという。
なお、今回の手法をより進化させていくことにより、人間の不安状態を簡易かつ高い信頼性を持たせた状態で計測する技術の実現への道が拓けたと研究チームでは説明している。