「絶対に勤めたいと思っていた会社の試験に落ちた後、実はその会社が自分が目指しているものではないことに気がついた」――1年以上も職を得るために活動したという米国の若手女性ジャーナリストであるFrances Bridges氏が、就職にまつわる苦労話をForbesのコラムで明かしている。

同氏のコラムのタイトルは「就職活動時代にやった5つの無駄なこと(原題「The 5 Biggest Wastes Of My Time When I was Unemployed」)。日米で就職活動のやり方は異なれど、Bridges氏のアドバイスはわれわれにも役立つことがありそうだ。

Bridges氏は20代で、現在はフリーランスライターとして活躍している。Forbesのほかに、女性誌「Today's Chicago Woman」の編集や営業にも携わっている。コラムでは、Bridges氏が大学を卒業してジャーナリストになるという夢を抱いてシカゴに出てきて1年間、キャリアをスタートさせるまでにやった「無駄だったこと」を紹介している。

(1)手当たり次第にオンラインでエントリーする

片っ端から興味ある求職にオンラインでエントリーする――この行為を、同氏は「誰かいい人の元に届いてくれますようにと願いながら、風が強い日に履歴書の束を飛ばすようなもの」とたとえる。

オンラインで求職にエントリーする時間は馬鹿にならないうえ、エントリーのその後を考えると、「努力に値しないのでは」というのが米国の就活から得た同氏の意見だ。募集企業の元には1日に何百通ものエントリーが寄せられているのだ。下手な鉄砲も……と呑気に構えていうる時間はない。

オンラインエントリーをしらみつぶしに行うよりも、「志望する業種や分野の人に会って直接話を聞くほうがはるかに有意義なはず」と同氏は助言する。

(2)イベントやセミナー、フォーラムをハシゴする

オンラインエントリーが時間の無駄なら、「求職者を対象とした就職イベントの参加も無駄だった」とBridges氏は振り返る(繰り返すが、あくまでも米国の就職活動の話だ)。20ドル~45ドルの入場料を払い、ネームバッジをぶら下げて会場をうろうろ。コーヒーを飲みなが、「企業が社員に求めること」「これからの社員はどうあるべきか」などをテーマとした講演やパネルディスカッションを聴く。会場には同様に就職活動している人が数百、ときには数千人おり、自分を少しでもアピールできればと期待して列に並ぶ。しかし多くの人の中から、採用担当者があなたに目をつける可能性はきわめて低いと言える。

「(多数の名前が入った)くじの中に自分の名前を入れて引かれるのを待つのではなく、あなたがオンリー1となる状況を作るべき」とBridges氏。では、そのためにどうすればよいのだろうか? 読み進めよう。

(3)カバーレター(添え状)に意味はあるのか?

米国では履歴書にカバーレターを添える習慣がある。日本の添え状や送付状とほぼ同じようなもので、箇条書きが中心の履歴書とは別に、自分をアピールする場所と言われている。

このカバーレターも、Bridges氏は無駄と見ている。「実のところ、カバーレターをしっかり読んでいる企業はない」と同氏。作っているほうも、あちこちからフレーズを借りてきてコピペした雛形を用意し、企業名だけを変えているというのが実情だろう。「あなたがやっていることは、みんなもやっている」――つまり、採用担当者は同じようなカバーレターに飽き飽きしているということになる。

ここでも、同氏は人と同じことを無差別にするのではなく、コネがありそうな人、あなたが入りたい企業や業種に明るい人といった特定の人に会うことを勧める。「対面で会うことで、自分の印象を与えることができる」――これがどんなに優れたカバーレターよりも効果があることは言うまでもない。

ツテがない場合はどうすればよいか。「とにかくたくさんの人とコンタクトをとり、あきらめずに探し続けること」と、Bridges氏はいう。「一人でカバーレターを書いたり、オンラインエントリーをしたりするよりも、フットワークを軽くして動いて人に会う、これが重要」と、同氏は考えている。

(4)好きではない仕事に応募する

給料が高い仕事や知名度のある会社は、自分のやりたい業種ではなくても少なからず興味を持つだろう。だが、「仕事や会社の外見やイメージにとらわれず、本当に自分がやりたい仕事かどうかを応募する前に問うべき」とBridges氏は助言する。

ここで同氏は自身の経験を明かす。グループ購入の米Grouponが出していたクーポンについて説明文を書く「クーポンライター」に応募したという。Grouponは注目のベンチャー企業で、なかなかカッコよさそうだ。安定した給料があるうえ、クーポンライターとはいえライターだからと、ジャーナリストを目指している同氏にしてみれば悪くない話に思えた。「何としてでもこの会社に入りたいと思った」と同氏。だが、結果として採用されなかった。

落胆した同氏だが、大事なことに気付くきっかけになったようだ。「自分が本当になりたいのはジャーナリストであって、クーポンライターではないでしょ? どうして落ち込むの?」と友人に声をかけられ、本当にやりたいことに向けた軌道修正ができたという。

「会社の外見にとらわれるべきではない。少し冷静になれば、本当にやりたい仕事に近づける」と、同氏は書いている。

(5)自分を疑う

就職活動が長く続くと、「自分は求めている職に就けるのか、ふさわしいのか」という疑念の思いにかられることもあるだろう。「自信がなくなり、応募しなかった企業もあった」とBridges氏。そんな時、「自分のキャリアを真剣に考えることができるのは自分だけ」という友人の言葉を聞いて、自信と勇気を奮い起こし情熱を追い求めることにしたそうだ。「自分が何をしたいのかを理解していることは大切」と同氏、「本当になりたかったら、そのために何だってできる」と続ける。

最終的に、同氏はForbesでキャリアに関するコラムを担当する著名なブロガーに何度も電子メールを送った。もちろん、知り合いでもなんでもない人だ。だが、このブロガーが同氏のメールに目をつけ、その経験をコラムで取り上げた。これがForbesの編集担当の目に留まり、今ではForbesで自分のブログを持つに至ったという。ちょっとしたサクセスストーリーのようだが、同氏は紆余曲折を経て、悩み自答しながら得たチャンスのように見える。

「自分がしたいと思っていることができるかどうかを決めかねている間に、したいことができない無駄な時間を費やしていることになる。好きなことをしていない時間は辛いもの。それは、自分にできるかどうかの疑いを克服するよりも辛いことのはず」とBridges氏。参考になっただろうか?