ルネサス エレクトロニクスは、SiCを採用したパワー半導体の第2弾製品として、電源変換回路やスイッチング回路を構成するSiCダイオードと複数の高耐圧トランジスタとを1パッケージ化した「SiC複合パワーデバイス」シリーズを製品化したことを発表した。

同社では、SiC採用により低損失化を実現したSiCショットキーバリアダイオード(SiC-SBD)をすでに製品化しているが、今回発表した製品は、スイッチング回路などでSiC-SBDと組み合わせて使用する高耐圧パワーMOSFETないしIGBTを1パッケージ化したもの。

同シリーズは、600V耐圧品で、SiCダイオードには日立製作所とルネサスが共同開発した低リークSiC-SBD技術を採用し、従来のダイオードによる単品構成時と比べて電力の低損失化を実現したほか、実装面積も約半分の16mm×40mm(5ピンのTO-3P外形)に小型化しており、機器の省電力化、省スペース化が可能となる。また、1パッケージ化による回路の高信頼性と、ユーザーでの回路ユニット設計の容易化を提供できるとしており、シリーズラインアップとして臨界モードPFC用「RJQ6020DPM」、連続モードPFC用「RJQ6021DPM」、インバータ用ハーフブリッジ「RJQ6022DPM」の3製品が用意されている。

RJQ6020DPMは、エアコン、FPDテレビ電源などの臨界モードPFC用スイッチング回路に必要なSiC-SBDと高耐圧パワーMOSFETを1パッケージ化した。動作効率97.8%を実現し、同社従来の単品で構成した場合と比べて約26%の低損失化が可能となっている。搭載したSiC-SBDの逆回復時間(trr)は15nsで、高耐圧パワーMOSFETは深溝トレンチ構造による高効率スーパージャンクション型(SJ-MOS)製品のため、低オン抵抗100mΩを実現している。また、同社臨界モードの力率改善制御(PFC)IC「R2A20112A/132」と併せて用いることで、容易にインターリーブ制御を実現できるという。

RJQ6021DPMは、通信用AC/DC整流器、PCサーバなどのPFC用に必要なSiC-SBDとIGBTを1パッケージ化したもの。搭載したSiC-SBDの逆回復時間(trr)は15ns、IGBTには高効率化が図れる極薄ウェハIGBTを用いることで、連続モードPFCに適した低オン電圧1.5Vを実現している。また、同社の連続モードPFC-IC「R2A20114A」とを用いることで、容易にインターリーブ制御を実現できるという。

RJQ6022DPMは、エアコン、産業機器のモータ駆動などのインバータ用ハーフブリッジの回路に必要なSiC-SBDとIGBT各2個を1パッケージ化したもの。搭載したSiC-SBDの逆回復時間(trr)は15ns、IGBTには極薄ウェハIGBTを用いることで、モータ駆動に適した低オン電圧1.4V、負荷短絡耐量(tsc)6μsを実現している。同製品1個でハーフブリッジ回路に対応しているため、2個でフルブリッジ、3個で3相ブリッジの構成を実現できる。モータ駆動回路の設計容易化が図れる共に、同社のRX600シリーズなどのマイコンとのキットソリューションも展開していく予定。

なお、2012年2月より3製品をサンプル出荷する計画で、サンプル価格は3製品それぞれ1,000円となっている。量産は2012年5月から開始し、2013年4月には合計月産30万個を生産する予定。同社では、このSiC複合パワーデバイスシリーズを高耐圧パワーデバイスの中核とし展開していく方針で、今後はこれらの製品とPFC-ICや、RX600シリーズなどを搭載したリファレンスボードなどを準備し、ユーザーにおけるキット評価やセット設計のサポートを進めるとしている。

「SiC複合パワーデバイス」の製品写真