エルピーダメモリは8月8日、2012年3月期第1四半期(2011年4-6月)の決算概要を発表した。売上高は前年同期比45.7%減の957億1600万円と大きく低下したほか、営業損益は前年同期の444億2200万円の黒字から38億2400万円の赤字に、経常損益は同370億3300万円の黒字から73億900万円の赤字に、純損益は同306億7100万円の黒字から78億6700万円の赤字にそれぞれ赤字転落となった。
同四半期当初は東日本大震災の影響によるDRAMの供給不足の懸念から在庫積み増しが見られ、需要が堅調であったものの、その後のPCの出荷台数の伸び悩みによるPC DRAMの需給バランスが崩れたことによる市場価格の急落が生じた結果、「想定の範囲を超えた下落となった」としている。なお、8月5日時点の2Gビット DDR3 1333Mbps品でコントラクト価格は1.59ドル、同メモリのスポット価格は1.09ドルまで低下している。
また、同四半期のビット成長率は2011年5月のガイダンスの20~30%を下回る15%となった。7~9月期のビット成長率も米国国債の格下げによる、世界的な金融情勢の不透明感などもあり、10%程度としたほか、通期のビット成長率も同ガイダンス時の50%以上から、40~50%へと引き下げており、同社代表取締役社長の坂本幸雄氏は「字結論から言うと、需要を見誤った。ここまでマーケットが弱くなるのは想定外であった」とコメントしている。
同社では、今後のDRAM業界の方向性として、「DRAMベンダ各社は工場の新設による規模の競争からプロセスの微細化による取れ数の増加を図っていく方向性が窺える」とするほか、これまでのPCがDRAMの中心市場であった状況から携帯電話やスマートフォン、タブレットなどが台頭してきた結果、PC向けだけではビジネスが成り立たなくなり、そうしたより1チップで大容量、高性能を実現することが求められる分野においては、プロセスの物理限界が見えてくる今後、さらに技術を有する企業がマーケットのシェアを獲得するものとの見方を示した。
DRAMベンダの変遷。PCからモバイルへと市場が移ることで、小型、低消費電力、高容量というニーズへの対応が求められることとなるが、それに応えられるDRAMベンダの数はほとんどなくなっているというのが同社の説明するところである |
すでにそうしたMobile DRAM向けに同社ではLPDDR2のチップ取れ数を競合と同一プロセスで作ってもより多く取れる工夫を施しているほか、High-K/メタルゲート(HKMG)を用いたさらに低電圧化した30nmプロセスLPDDR2品を2011年度中にサンプル出荷を開始する計画としている。また、0.8mmの薄さに4Gビット品のMobile DRAMを4段積み重ねるPoP技術の開発も40nmの量産技術は確立済みで、現在は30nmプロセス品の開発を進めており、今後は0.6mmへの薄型化を進めていくとする。さらに、TSV技術としても8Gビット品のサンプル出荷を開始しており、今後は16Gビット品(30nmプロセス、32ビットI/O)およびWide I/O(512ビットI/O)の開発を進めているとしている。
こうした先端プロセスでの優位性を確保するために同社では4Gビットの30nmプロセス品(25nm化含む)に注力していくとしており、2011年末までには30nmプロセス品の数を半数以上に引き上げ、2012年にはほとんどのメモリを4Gビット品にしていくことで、「30nmプロセスを実現できないDRAMメーカーは今後、競争から脱落していく。エルピーダとしては4Gビット品をPCにもMobile DRAMにも提供し、その比率を高めていくことで、シェアの拡大を図っていく」とする。
同じプロセスを用いてもウェハあたりの取れ数は異なり、取れ数が多ければ多いほど、製品の出荷個数を増やすことが可能となる |
PoP技術を用いることで大容量化を実現しつつ、ウェハおよび1パッケージ単体を薄くすることで、PoPそのものの薄さも維持している |
また、投資効率の向上に向けマスク枚数の削減も進めており、「(露光装置ベンダ大手の)ASMLからは、液浸ArF露光装置をそんなに買ってくれないエルピーダは敵だと言われたが、我々は装置メーカーを儲けさせるためにビジネスを行っているわけではない」とし、さらなる低コストでのDRAM製造を目指す姿勢を強調する。
加えて、さらなる微細化に向けた取り組みとして、1X世代ではダブルパターニングの活用を模索しつつEUVの活用も視野に入れ、広島工場に20億円程度をかけてEUVを導入する新棟の建設を計画しているとしている。
なお、同社ではマーケットの見通しは2011年3月末時点での見込みからは携帯機器、デジタル家電、PC分野いずれも雲行きが怪しくなってきているが、8月現在で各社の在庫調整が進んでおり、「市場はベストケースで9月から、ワーストケースでも11月には回復できるもの」との見方を示している。