本題の中期経営計画だが、中長期ビジョンは昨年の発表と同じだが、各事業の体制は2011年に入り最適化が進められている。デジタルプロダクツでは別々のカンパニーであったTVとPCを4月に統合。これにより、タブレットなどの携帯機器を含め、ハードウェアの境界をなくし、テレビやWebブラウズ、ソーシャルメディアの活用などを共通プラットフォーム「SmartX」を活用して提供するほか、クラウドサービス側のサポートも行っていく計画で、こうしたデジタルプロダクツ融合商品・サービスで2015年には8000億円の売上高を目指す。

2011年度における外部環境

TVとPCのハードウェアの垣根を取り払い、機能などの融合を図った商品や連動サービスなどの提供を進めていく

また、電子デバイスでは、システムLSI事業の製品集約とファブレス/ファブライト化を2011年1月に発表。アナログ半導体およびイメージセンサへの集中に向け、300mmウェハを活用したSoCのアウトソース比率を2011年度で50%、2013年度には80超とする計画で、「状況次第ではもう少し加速するかもしれない」と、NAND型フラッシュメモリ以外の半導体の設計、製造におけるリソースのシフトを鮮明に打ち出している。アナログ半導体やマイコン事業についても、製品数を半分に削減し、高収益製品への集約を図るほか、150mmウェハから200mmウェハへの大口径化を推進し、収益の改善を図っていくとする。

一方の事業の柱の1つであるNAND型フラッシュメモリだが、すでに19nmプロセス品のサンプル出荷を開始しており、同7月からの量産を予定。「19nmプロセスより先の微細化は厳しいが、1X世代を後2世代程度いけると見ている。その後は、次々世代の技術としてのBit-Cost Scalable(BiCS)や次々世代3Dメモリ技術の活用などを視野に入れる」とするほか、製品応用として自らがSSD事業の強化に向けた組み込み向け製品やHDDとの一体製品の開発などを行いつつ、2011年7月より量産、同8月からの出荷を予定しているFab5での増産やプロセス微細化を素早く行っていく方針を示しており、これにより2015年度で1兆1000億円の売上高を目指す。

19nmプロセス製品も登場し、プロセス微細化の限界が見え始めたNAND型フラッシュメモリ。後2世代程度は微細化できるとの見方を示しているが、その後はビット当たりの単価引き下げ技術や積層技術などによるコスト低減施策などを進めていく必要があるとの見方を示している

そして社会インフラでは、4月にスマートコミュニティとTransmission and Distribution(T&D:送電・変電・配電事業)を統合し体制を強化したほか、同月にパワーエレクトロニクス系の強化として、これまでEV用や電車用などの縦系列での分け方から、統合化することで、展開しやすくしたとしている。

スマートコミュニティではLandis+Gyrの買収による発電から送電先の末端まで垂直統合で提供し、インフラ整備やエネルギーマネジメントまでトータルで提供することで、昨年公表した2015年度目標7000億円から9000億円へと上方修正をした。

スマートコミュニティは発電プラントからスマートメータ、家庭内の機器やそれらのエネルギーマネジメントまで垂直統合で提供できる体制が整いつつある

パワーエレクトロニクス・EVでは、蓄電池の技術を組み合わせて提供することで、2015年度8000億円の売上高。再生可能エネルギーは太陽光発電のほか、水力や地熱・太陽熱、そして5月23日に発表した韓国Unisonへの資本参加による風力事業への参入などを進めており、2015年度で3500億円の売上高を目指すとする。

バッテリ、モーター、インバータなどの各種の環境負荷低減が可能な高効率技術を組み合わせることで、さまざまな用途に対応した製品を提供することを目的に組織再編を行った

再生可能エネルギーでは既存の太陽光、水力、地熱・太陽熱に加え、新たに風力分野への参入も果たした

また、ヘルスケア分野は新興国向けのCTスキャンの提供や、治療領域の拡大を目指した大口径CTや次世代重粒子線照射装置の提供のほか、子宮頸がん原因ウィルス型判別用DNAチップが5月に保険収載されるなどの動きがあり、2015年度で1兆円の売上高を目指すとする。

ヘルスケア分野は、TOBなども含めて領域の拡大を進めている