NVR500の特徴として、利用可能な通信手段の多様性が挙げられる。光ファイバーやxDSLをはじめとするブロードバンド回線、アナログ電話回線、ISDNに加えて、3G携帯電話用のUSBデータ通信アダプタも接続可能だ。このため、臨時設置でいちいちブロードバンド回線を導入するまでもないケース、あるいはブロードバンド回線の開通待ち、といった場面でも通信を確立できる。

こうした事情からUSBインタフェースを利用する場面が増えているため、NVR500ではインタフェースが強化された。RT58iはUSB×1だけだったが、NVR500はUSB×2・microSD×1となっている。しかも、設定画面ではUSBデバイスの速度テストを行う機能があり、どの程度の性能が出るかを事前に確認できる。

このインタフェースの充実により、USBはストレージやデータ通信に割り当てて、ログの記録やファームウェアの更新にはmicroSDを使う、といった使い分けが可能になった。特にmicroSDは単価が安いので、コストを気にしないで利用できる。

そのほか、IPv4アドレスの枯渇がいよいよ現実のものになりつつある昨今では、NVR500を含むヤマハルータがIPv6に対応してくれているのは心強い。

NVR500の前面には、USBコネクタ×2・microSDスロット×1を備える

USBとmicroSDは個別に、使用の可否を設定できる

USBやmicroSDからシステムを起動する場面、あるいは共有対象にする場面に備えて(?)、速度計測機能があるのは親切だ

保守・管理の手間を軽減するための配慮いろいろ

前モデルのRT58iから、保守・管理を楽にするための機能が大幅に充実した。たとえば、筐体前面にある[DOWNLOAD]ボタンがそれだ。通常なら設定画面にアクセスして操作しなければならないファームウェアの更新を、このボタンひとつで実行できる(事前に設定画面で、ボタンの動作を指定する必要はあるが)。これなら、ルータの設定手順を知らないユーザーでも、ボタン操作ひとつで最新のファームウェアに更新できる。

また、USBメモリやmicroSDから設定ファイル、あるいはファームウェアを送り込むこともできるので、複数のルータに対して同じ設定を行う、あるいはファームウェアを更新してまわる、といった場面で利便性が高い。TFTPを利用してネットワーク経由で送り込むのが一般的な手順だが、いちいちTFTPのアクセス許可設定を行う必要があり、しかもネットワークにつながったルータでなければ実行できない。外部ストレージを利用する方法であれば、極端な話、オフライン状態でも設定変更などの操作が可能になる。

設定ファイルやログを外部メモリに保存できるので、ログだけ持ち帰って調べる、なんていう場面で楽ができそうだ

[DOWNLOAD]ボタンは既定値では無効化されているが、設定変更によってファームウェア更新、あるいは電波受信レベルの確認(データ通信アダプタ接続時)に利用できる

まとめ

NVR500の価格は3万円台後半であり、一般的なブロードバンドルータと比較すると高価に感じられるかも知れない。しかし、充実した機能を見れば、価格に見合った、いや、それ以上の内容を備えたルータであることは理解していただけると思う。特に、安定性や信頼性を求める一方で保守・管理に割くことができる人手が少ない中小企業・SOHOユーザーにとっては、頼りになるツールといえるのではないだろうか。

■試用機の仕様
製品名 「NVR500」
スループット 最大1Gbit/s、実効800Mbit/s
WANプロトコル PPP、PPPoE、MP
PPPoEセッション数 5
認証機能 PAP/CHAP、MS-CHAP/MS-CHAPv2、ISDN識別着信
インタフェース LAN×4、WAN×1、ISDN Uポート×1、ISDN U/LINEポート×1、TELポート×2、microSDカードスロット、USB 2.0×2、CONSOLEポート
サイズ/重量 W220×H41.5×D161.9mm/600g
価格 オープン(店頭予想価格は37,000円前後)

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