Q:次にTower Systemについて少し。現状、Tower SystemはFreescaleの独自規格になっていますが、業界では例えばPC104とかStackable USBとか、様々な標準規格が既に存在しています。こうした標準規格を使う、というアイディアはなかったのでしょうか?

Tower Systemはカスタマがプロトタイピングを容易かつ迅速に行うためのものだ。君が言っているのは、カスタマが(拡張)カード、あるいはボードを作る場合の話だ。もちろん、そうしたことは可能だ。ただ、我々はTower Systemを現在市場に流通しているOpen Sourceの様々なボードと競合させるつもりはない。カスタマは自身でTower Systemに対応したボードを作ることも、あるいはその他の標準規格に準拠したボードを作ることもできる。

既にTower Systemを発表して2年が過ぎ、30を超える種類の様々なボードがある。またパートナーもこのTower Systemを使って、プロトタイピングを容易にするツールをリリースしている。このTowerのエコシステムの例としては、Wi-FiコネクティビティやAnalog I/F、あるいは最近だとMemoryなどがある。様々な種類のMemoryを接続するためのものだ。こうしたものはサードパーティから提供されている。30種類のボードのうち半分以上はFreescaleから提供されているが、サードパーティも負けずに新しいボードを投入しており、これによってTower Systemのエコシステムが活発になっている。

Q:もちろん大量に生産するという場合には、Tower Systemをプロトタイプのみに使うというのはリーズナブルでしょう。ただ少量多品種、例えば生産量が100とか200という場合は、プロトタイピングのみならず最終製品としても使いたいと思うのですが

もちろん、そうすることは可能だ。BOMのみならずGerber、Semantics、全ての情報が公開されている。もし誰かがTower Systemを使って自身のカードを作りたいという場合、カードを長く作って片方にTower SystemのEdge Connectorを取り付け、反対側に自身の望むものを取り付けるとかもできる。プロトタイプでは、まず最初に上司に見せなければならない。ColdFire+のターゲットボードに、タッチセンシングやWi-Fiなどの必要な機能を拡張カードの形で追加すればいい。MQXはそれらのドライバを全部持っているし、CodeWarriorで迅速にコード生成が可能だ。数日後に上司にそれを見せてOKが出たら、そこから専用のターゲットボードの開発に掛かることになる。Tower Boardをそのまま使えるか? といえば、おそらくはNoだ。ただ幸いにもTower SystemはOpen Standardだ。

Q:もう1つ。Tower SystemはおそらくCorporate Userには手ごろな価格なのでしょうが、個人のホビーユーザーにはちょっと高い金額です。ご存知の通り、NXPのmbedは40ドルを切る価格に設定されています。あるいはSTMicroはSTM32 ValueLineをラインナップしていて、これは10ドルを切っています。これに比べるとTower Systemはちょっと高価格に思うのですが

2つの事柄が言える。まず、機能が多くなるとどうしても高価格になる。それはそれとして言いたいことはわかる。Tower Systemは高いか? Yes。その通りだ。

Q:先ほどローエンドのKinetisの価格は1ドルを切ってるという話がありましたよね? これを使えば、システム全体で30~40ドルの価格に収まる開発ボードを作るのはそう難しく無いように思うのですが?

その通りだ。例えばTower Systemを丸ごと買うという場合、Tower Moduleの価格はそれぞれ50~60ドル程度になる。キットの場合、通常シリアルカードが含まれている。だから、これからシステムを購入して開発を始めようという場合、やや高くつくのは間違いない。ただ、もう少し安い方法も考えており、"Stay tune"が答えとなる。

Q:例えば昔、FreescaleはBadge Boardを出していて、あれはそう高くなかったですよね? KinetisベースのBadge Boardなんてどうです?

今言えることは、もうしばらく待てということだ。数カ月後には何かを見せることができるだろう。今年のFTF Americaには来るのかい? もし来るなら、次の開発プラットフォームをお見せできると思う。

インタビューを終えて

ということで、毎度のごとく1時間ほどのインタビューだが、Bock氏から色々とお伺いすることが出来た。以前に比べると、ColdFireのポジションが相対的に後退しているわけだが、これはこれで悪いことではないと思う。ロードマップによってはまだColdFireが汎用のポジションに残っていたりするが、基本的には汎用がCortex-M4ベースのKinetisで一本化され、ColdFireは特定分野向け、と明確化された形だ。もっともこうした判りやすさも、PowerPCベースのPXシリーズの投入で台無しになってしまった感もなくはないのだが。このあたりは、複数の有力なアーキテクチャを社内で抱えている半導体ベンダらしい動き、と言えるのかもしれない(どことなく、ルネサス エレクトロニクスなどとも共通なものを感じなくも無い)。

ちなみに最後にBook氏が言及していたFTF Americaだが今年はテキサス州サン・アントニオに場所を移し、6月20日~23日に開催される予定だ。