新日本製鐵(新日鉄)は4月25日、同社グループ会社である新日鉄マテリアルズが手がけている4インチ以下のSiCウェハの生産能力を2012年3月末までに現状の約3倍となる月産1000枚まで段階的に引き上げていくことを発表した。また、併せて、米Creeと新日鉄が全世界で保有するSiC単結晶ウェハおよびSiC単結晶エピタキシャルウェハに関わる特許に関する相互ライセンス契約を締結したことも発表した。
SiC単結晶ウェハは、半導体デバイスの製造に主に用いられているSiウェハに比べ、絶縁破壊電界強度や熱伝導性等の半導体特性に優れており、ダイオード、トランジスタといった半導体デバイスに適用した場合、耐電圧の向上が可能となるほか、電力変換損失もSiに比べ、数十分の一から十分の一に抑えられることから、太陽光発電用インバータでの電力エネルギーの高効率運用化や産業用電気機器での省エネルギー化の実現に向けた期待が高まっている。
新日鉄は、同社先端技術研究所において研究開発を進めることで、国内での4インチSiC単結晶ウェハの製造に成功、2009年より新日鉄マテリアルズにおいてSiC単結晶ウェハ事業を行ってきた。
今回の、SiC単結晶ウェハ製造およびLEDや各種のSiCパワーデバイス事業を展開しているCreeとの友好的相互ライセンス契約の締結により、トップレベルのSiCウェハ技術を有する両社がそれぞれ保有する特許を相互に適用することが可能となり、高品質SiCウェハがグローバル市場へ、よりスムーズに投入されることになると新日鉄では説明している。
今回のSiCウェハ生産能力増強は、新日鉄とCreeの相互ライセンス契約が締結されたことを契機に決定されたもので、これによりカスタマからの安定供給要請に確実に応えていく体制が構築されることとなるとしており、その結果、SiCパワーデバイスの開発と製品化を加速させることとなり、SiCデバイス市場の拡大とエレクトロニクス産業の活性化につながるとしている。