ルネサス エレクトロニクスは、携帯端末など、複数の無線規格に対応するRFトランシーバ向けに、外付けの表面弾性波(SAW)フィルタを用いずに高性能(高線形)の再構成可能(リコンフィギュラブル)なRFトランシーバを開発した。ベルギーIMECが進める研究プログラム「green radio」に基づくもので、この成果を元にルネサスはIMECとの共同開発を3年間延長することを決定した。2月20日から24日まで米サンフランシスコで開催されていた半導体の国際学会「国際固体素子回路会議(International Solid-State Circuits Conference:ISSCC 2011)」において、2月23日(米国時間)に発表された。

開発されたRFトランシーバと評価ボード

リコンフィギュラブルなRFトランシーバを設計するための課題の1つとして、アンテナフィルタへの要求が厳しいことによるリコンフィギュラブル化が難しいということがある。

今回開発されたRFトランシーバの受信部は、入力線形性を高くしたことで、大きな帯域外妨害波がある場合でも正常な受信が可能となったため、SAWフィルタを除去しても問題がなくなり、アンテナインタフェースを簡略化することが可能となった。

この受信部は、3dBの雑音指数と20MHzオフセット(希望波の周波数に対して20MHz離れた周波数)で0dBmの妨害波を扱うことができるほか、従来発表されていたものの中でも最高クラスの線形性(+10dBmの3次変調歪み、+70dBmの2次変調歪み)と動作周波数範囲を達成したという。

また、送信部における適応型帯域外雑音フィルタと電圧サンプリング型の送信周波数変換器を組み合わせることで、SAWフィルタ不要を可能とする-162dBc/Hzの受信帯雑音を達成した。

複数の周波数で作動する必要があるFDD(周波数分割多重)方式を採用した3GPP-LTEなど、将来の規格へ向かった進化の上で、SAWレスの送信部はますます重要になってくると同社では見ており、今回の受信部、送信部の技術を用いることで、携帯端末や各種バッテリ駆動の無線通信機器、小セルの基地局などにおいて、多くの標準規格、個別ニーズの要件を満たすようにプログラムすることが可能となり、今後のRFトランシーバのマルチモード化への要求を解決する1つの解となるものとしている。