試走での調整こそ勝利の決め手!

林(南関東地区審査委員長):ちょっとみんな、南関東の試走会2を思い出してくれないかな。

中嶋博貴さん(25歳)。ETロボコン暦2年目。ネットワークシステム開発部に所属し、業務では携帯電話の基地局関連の開発を担当

宮崎:思い出しました…ひどかったんですよ。本番同様のコースで試走会をしたんですが、皆全然ライントレースができなかったんです。モデルに書いたふるまいがちゃんとできているか、南関東独自のポイント制で特別賞がもらえるという話になっていたんですが、ウチのチームは全敗で(笑)。全然走らなかった。"こっぺぱん♪"もダメで、"i-K∀S"も…。

――入賞したチームが皆ダメだった訳ですか。それは結局、何が悪かったんですか?

宮崎:照明の点滅の影響が出てしまって。ライントレースの仕組み上、コースの急激な色の変化を検出するとキッと方向を修正するような処理があるんですけど、普通の光の点滅でその処理が動いてしまっていた。最初はそれに気づかなくて…。

林:南関東の実行委員たちの間でも、なんで走らないんだ? これじゃ地区大会自体がダメだ、という話になって、いろいろ探って…やはり照明の具合がよくないと。それで各チームが、ローパスフィルタを組むなどの対策を持ってきたんです。

――最終的にはどういう形に落ち着いたんですか?

宮崎:ウチは平均化処理…取ってくるデータが振れるので移動平均処理を行なって振れないようにしました。

――センサからの入力を内部で均した訳ですね。先ほど朝の試走会でかなり調整されたという話がありましたが、その段階ではハラハラするところもあったんですか?

宮崎:事前に調整する内容をちゃんと考えておいて…光を調べて、マシンが使う値を計算して、いつもの神奈川工科大のコースで走っている状態を再現する処理を入れてあったんです。事前にパシフィコ横浜のデータを南関東のメンバーが取ってきてくれていたのもありまして。

――そこは地元ならではですね(笑)。では試走でやるべきことは、パニックになることもなく淡々とやれた訳ですね。

宮崎:じゃないかな? と思います。

大会開始前の試走では役割分担を綿密に決めて走行体の調整を行なったとか

岩井孝之さん(28歳)。ETロボコン暦1年。ネットワークシステム開発部所属で、基地局関連の開発を担当。今回の4人のメンバーの中では唯一、業務で組み込み分野に携わる

林:(試走での)15分の計画を立てたんでしょ?

山口:プログラム開発の時間はいくらでも使えますが、実環境で調整できる時間は(15分×2回=)30分だけ。文字通り1分たりとも無駄にはできない。なので、誰がロボットを走らせて、その間に誰がプログラムを修正するか、誰がビデオカメラで撮影して挙動を記録しておくか、役割配分をあらかじめ綿密に決めて計画通りに実行した結果、本番での完走につながりました。

林:どのチームも、モデル設計、実装、テストとやってきて、皆自分たちは走れると思ってるんです。で、現場に来て初めて走れないと分かった時のパニクり方は尋常じゃない。過去の(AEK RUNNER)チームはそういうところで痛い目を見てきたので…(笑)。

岩井:私は今年初めてですが、入ってきた当時は、本番で動かなくなることなんてないでしょ、って言ってたんですよ(笑)。他の3人は、いや動かない時は動かないから、って言ってたんですけど、実感するまでは分からなかった。試走会で本当に全然動かなくなることがあると思い知って、どうすべきかを考えるようになりましたね。