富士通研究所は、光と熱のいずれからも電力を取り出せるハイブリッド型の発電デバイスを開発したことを明らかにした。2010年12月6日~8日かけて米サンフランシスコで開催された半導体デバイスに関する国際学会「IEDM 2010」にて発表された。
同技術は、周りの環境からエネルギーを収穫して電力に変換するエネルギーハーベスティング(環境発電)の分野での応用が期待できる。従来、光、振動、熱、電波などからエネルギーハーベスティングで発電できる電力は、発電所や電池から供給される電力と比較して微少であるため、ICT機器で利用するためには多くの発電を行う必用があった。また、光や振動は常に周りの環境に存在するものではないため、その都度存在する周りの環境から効率よくエネルギーを収穫することが求められている。
しかし、光と熱、光と振動など複数のエネルギー源に対応する発電デバイスを構成するためには、それぞれに対応したデバイスを複数組み合わせる必要があったため、コストが高くなってしまうという問題があった。
今回、研究チームは、エネルギーハーベスティングのエネルギー源として、身近で応用範囲が広い光と熱に着目、そのどちらにも対応できるハイブリッド型発電デバイスを開発した。これにより、複数の発電デバイスを組み合わせることなく、1つの発電デバイスで光と熱の両方からエネルギーを収穫し発電することが可能になる。
具体的には、光環境と熱環境時それぞれの場合に、2つの半導体材料(P型とN型)の接続を回路的に切り替えることで、光電池と熱電素子の2つの機能を実現した。
また、光発電と熱発電の両方で発電可能な有機材料を開発。同材料は室内光でも発電能力が高く、熱でも発電が可能なもので、かつ安価という特長を有するため製造コストも削減することが可能となる。
同研究所では、今回の技術により、1つのデバイスで光環境と熱環境という2つの環境で発電可能となることから、これにより、たとえば病室で体温や血圧、心音などの計測をセンサをつけて監視するような場合、光環境と熱環境が存在してはいるものの、従来のように片方の環境だけでは十分にエネルギーが収穫できない場合でも、両方のエネルギーで補うことができるようになるほか、電気の配線や電池の交換の課題のために普及しなかった観測空白地域での気象センサなどでも利用することが可能となるとしており、今後、同ハイブリッド素子の性能向上と量産化技術の開発を進め、2015年ころの実用化を目指すとしている。