東京・稲城市の富士通フロンテック本社

富士通フロンテックは、11月30日、東京・稲城市の同社本社で、事業方針説明会を行い、2013年度に連結売上高1,700億円、連結営業利益率6.0%、海外販売比率30%を目指す中期経営計画を発表した。

同社は、富士通グループにおける金融サービス関連製品のほか、表示ユニット、POSなどを「フロントテクノロジー」事業と位置づけ、ここ数年に渡って、富士通グループ内に分散していた関連事業を同社へ集約してきた。金融機関向けATMでは、みずほ、三菱東京UFJ銀行、SMBC、りそなといったメガバンクのほか、大手地銀でも導入。表示装置事業では、川崎競馬場や上海虹橋空港などの大規模表示装置の導入実績などを持つ。そのほか、カラー電子ペーパーや手のひら静脈認証センサー、RFIDなどの技術を持ち、これらを活用したビジネスを展開している。

富士通フロンテック 代表取締役社長 海老原光博氏

富士通フロンテックの海老原光博社長は、「海外ビジネス、サービスビジネスを拡大し、さらにソリューションビジネスを強化。コストダウンなどによるさらなる経営努力により、目標達成を目指し、それに向けた具体的に施策を展開する」とした。

重点施策として、金融、流通、公共における「サービスビジネスの拡大」、メカコンポーネントのOEMビジネス強化などによる「グローバルマーケットの事業拡大」、店舗全援型総合ソリューションの提案などによる「国内店舗ビジネスの強化」の3点を掲げた。「2013年度までに70億円の増益が目標となるが、増収で30億円、サービス関連の成長で20億円、製造拠点などのコストダウンで20億円を見込む」という。海外売上高は、現在の220億円から、2013年度には514億円と2倍以上に拡大する計画だ。

海老原社長が掲げる3つの重点課題

2013年度を最終年度とする中期経営計画

また、2013年度までの3年間で141億円の設備投資計画と、134億円の研究開発費用の投計画を公表した。

設備投資では、アウトソーシング用ハードおよびソフト、ATMやPOSなどの次世代ハードウェアに、研究開発投資では、次世代ハードおよびソフト、SaaSなどへの重点投資を計画している。

2010年度の売上高目標は、前年比17.8%増の1,120億円。営業利益は9億円増の32億円。そのうち、ATMおよび営業店端末などの金融ビジネスが400億円、営業利益が20億円。POS、ハンディターミナルなどの流通ビジネスは売上高が270億円、営業損失は7億円の赤字。トータルゼータや表示ユニットなどの産業・公共ビジネスは売上高が230億円、営業利益は6億5,000万円。店舗向けATMサービス、金融コールセンターなどのサービスビジネスは売上高が220億円、営業利益は12億5,000万円としている。

金融ビジネス

富士通フロンテック 金融システム事業本部長 今村洋経営執行役

金融ビジネスを担当する富士通フロンテック 今村洋経営執行役は、「手のひら静脈を搭載したATMでは、三菱東京UFJ銀行で6,000台を導入、60万人が登録しているが、ブラジルの金融機関であるBradesco銀行ではすでにATMで1万6,000台、登録者数230万人という規模の導入も達成している。今後は増加するコンビニエンスストア、流通市場でのATMのシェア拡大をはかり、現在26.1%のシェアを、30%に拡大していきたい。また、メガコンポーネントビジネスが成長の鍵になるとみており、グローバル向けの紙幣出金機およびリサイクル入出金ユニットのラインアップを拡充する」とした。2013年度の売上高は620億円、営業利益は47億7,000万円を見込んでいる。

金融ビジネスの中期計画

流通事業

富士通フロンテック 流通事業本部長 松森邦彦経営執行役

流通事業本部長である富士通フロンテック 松森邦彦経営執行役は、「費用投資が先行しており、赤字を見込んでいるが、2011年度からは黒字転換を図る。グローバル統一機であるTeamPOSによるボリューム確保に加えて、各国のニーズにあった低価格で、タイムリーな製品提供を図る。2013年度には年間10万台のPOSの出荷を目指す。さらに、セルフチェックシステム専任プロジェクトチームによる日本市場への浸透、店舗内のソリューションビジネスの新規創出にも取り組む。また、RFIDにおいては国内外のRFID関連ベンダやソリューションパートナーとの連携を図る」などとした。2013年度の売上高は500億円、営業利益は9億8,000万円を目標としている。

流通ビジネスの中期計画

産業・公共ビジネス

富士通フロンテック 公共システム事業本部長 吉川範昭経営執行役

産業・公共ビジネスを担当する富士通フロンテック 吉川範昭経営執行役は、「トータリゼータビジネスでは、2009年7月に、製品開発、製造部門に加えて、富士通から移管により、販売、運用、保守までを一体化した事業再編を行い、顧客ニーズに合致した製品、サービスをタイムリーに提供できるのが強み。中央競馬会に1万3,500台のトータリゼータ(自動払出機)を導入。国内市場全体で56%のシェアを獲得している。一方で表示システムでは、既存ビジネスでのシェア維持とともに、プラズマチューブアレイによるデジタルサイネージ市場への新規参入などを図る。カラー電子ペーパーは富士通研究所と連携することでの表示性能の改善、電子書籍端末や電子教科書の市場をターゲットにした拡販に乗り出す」などとした。2013年度の売上高は300億円、営業利益は23億8,000万円を目指す。

公共ビジネスの中期計画

サービス事業

富士通フロンテック サービス事業本部長 齋藤清経営執行役

サービス事業本部長の富士通フロンテック 齋藤清経営執行役は、「製販一体化、ハード、ソフト、サービスの一体運用といった、個別の製品、サービスの強みを支える強固な基盤がある。店舗向けATMサービスでは、独自のビジネスモデルと、先行するクラウドシステムが強みであり、金融向けATMサービスでは精度の高い警送計画や使用総現金の低減ノウハウ、流通サービスではシステム問い合わせとハード保守のワンストップ化が、それぞれに強みとなる。サービス商品範囲の拡大と強化、コスト競争力の強化を図っていく。顧客の内部統制に準拠していく体制を確立するとともに、クラウドサービスに力を注ぐことが今後の差別化になる」とした。2013年度の売上高は280億円、営業利益は20億7,000万円を目標にしている。

サービスビジネスの中期計画

今回の事業方針説明会にあわせて、富士通フロンテックでは、NTTドコモ向けに供給している業務用携帯電話端末「F-05B」、カラー電子ペーパー「FLEPia」、プラズマチューブアレイ、UHF帯RFID、小型紙幣リサイクルユニットといった同社製品についても紹介した。

F-05Bでは、業務用ハンディターミナルとしても利用できるドコモ初のバーコードリーダー搭載の携帯電話で、佐川急便ではセールスドライバーが集配業務端末として、10月21日から2万4,000台を導入。ドライバーが所有する端末が4台から2台に削減。小型軽量化、タッチパネル化による集配業務の簡素化、負荷軽減を実現したという。運輸、小売、卸、製造分野などでの導入商談が進んでいるという。

NTTドコモ向けに供給している業務用携帯電話端末「F-05B」

富士通フロンテック 利根廣貞経営執行役専務

カラー電子ペーパー「FLEPia」では、パネル素材にフィルムを使用していることから軽量、薄型、高耐久性を達成しているほか、表示内容の保持に電力が不要であることから、長時間運用が可能になるなどの特徴があることを強調。最新の技術では、従来製品に比べて、コントラストで7対1と約3倍、書き換え速度を0.7秒と約2倍にしたという。「今後は、この分野で実績がある台湾の企業と連携した形で商品化していきたい。具体的なビジネスプランについて、話し合いを進めており、これにより、コストダウン、販路の開拓につなげることができる。また将来的には書き換え速度を0.1秒程度にまで改善していきたい」(富士通フロンテック 利根廣貞経営執行役専務)とした。「紙の教科書を配布できないよう国もある。そうした市場に対して、電子教科書として配布できるぐらいのコストダウンを図りたい」(富士通フロンテックの海老原光博社長)とした。

カラー電子ペーパー「FLEPia」

プラズマチューブアレイ。2011年度には商品化する計画

また、プラズマチューブアレイは、世界で唯一曲げることができる大型ディスプレイであり、柱巻広告に活用可能なサイネージディスプレイとして展開していることを説明。「直径1メートル、高さ2メートル、厚さ50mmというサイズを標準として、これを円柱に巻き付けて提案する。2011年度には商品化する計画である」(富士通フロンテック・利根廣貞経営執行役専務)とした。専用光学フィルターの適用とチューブ生成プロセスの改善により、表示輝度は前年比30%向上となる350カンデラ、コントラスト比も同じく30%増となる2000:1へと進化しているという。

9.0×9.0×3.7mmという世界最小クラスのUHF帯RFID。11月から出荷を開始している

小型紙幣リサイクルユニットが搭載されたセルフチェックアウトシステム