既報の通り12月1日~3日にかけてパシフィコ横浜でET2010が開催されているが、この初日には招待講演としてIntelのTon Steenman氏が「インテル アーキテクチャーが切り開くコネクテッド・エンベデッド・コンピューティング」と題する招待講演を行ったので、この内容をご紹介したい(Photo01)。
Photo01:Vice President, Intel Architecture Group and General Manager, Embedded and Communications GroupのTon H. Steenman氏 |
氏はまず2015年には150億個のConnected Deviceが世の中に存在することになるとした(Photo02)上で、プロセスの微細化を含む技術進歩に伴い、よりユーザーからのVisibilityを下げ、Transparentな存在になってゆく、と説明した(Photo03)。こうした一例として氏は、様々なConnected Deviceの実装例を紹介しながら(Photo04~09)、こうした実装を可能にするIntelのSolutionに話をシフトさせていった(Photo10,11)。
Photo08:Steenman氏曰く「香港に行ったときにアメリカのカードでお金が下ろせた」と、今ではわざわざ言うような話ではない、といえばそうなのだが、冷静に考えればこれもすごいことではある |
Photo09:こちらが現在Intelが猛烈に力を入れている分野 |
Photo10:1990年代のEmbedded Deviceは固定機能の汎用製品を単独で利用しており、これが2000年代では専用品やFPGAと組み合わせ、さらにネットワーク接続が可能になった |
Photo11:現在はこれに運用管理やセキュリティ機能が組み合わさり、さらに電力効率の高い製品が投入されているという話 |
ここで壇上に沖電気工業の井上清司氏(Photo12)が登壇。同社が取り組むデジタルサージ関連ソリューションについて紹介(Photo13~14)とデモ(Photo15~16)を行い、今後の展開を説明した(Photo17)。この井上氏の説明を受ける形で、この20年でパッケージサイズは劇的に減り、かつ性能はむしろ向上していることをSteenman氏は紹介した(Photo18,19)。
Photo13:同社はかなり前から様々な顔認識技術を開発しており、これをデジタルサイネージに応用していったという事を説明 |
Photo14:デモは2点で、カメラの前に立った人物情報の取得と、インタラクティブサイネージの例である |
Photo15:顔認識の例。これはカメラの前に12人分の顔写真を貼ったパネルを掲げると、その顔の位置と性別・推定年齢を自動的に算出するという例。このあたりの判別アルゴリズムがポイントとなる訳だが、そこまでの説明はなかった |
Photo16:こちらはカメラの前に掲げた商品パッケージに合わせて、右側でその製品の紹介を行うというデモ |
Photo17:今回のソリューションはソフトウェアだけで行っているから、今後の高性能化や精度向上にはより高い処理性能が必要で、また商品化には小型化が求められる事を考えると、より一層小型化・高性能化が図られたIAプロセッサが必要である、と説明した |
次いで話は、そうした様々な用途に向けた製品をどう構成するかという話になった。昨今のEmbeddedの場合、用途に応じて必要とされるI/Fが異なってくる(Photo20)。こうした用途向けに昨年Intelが発表したのがEmbedded向けのAtom E600シリーズで、2チップ構成とすることで任意の用途向け製品を簡単に構成できる(Photo21,22)。ここでOKIセミコンダクタの藤田尚孝氏が登壇(Photo23)、同社が提供するAtom E600用チップセットについて紹介を行った(Photo24,25)。続いてSoft Servo Systems, のBoo-Ho Yang氏が登壇(Photo26)、同社が開発した「じゃんけん」ロボットの紹介とデモを行ってE600シリーズの性能を示した(Photo27~29)。
Photo20:もちろん顔認識とかではAtomでは性能が不足するが、一般的な用途ではこれで十分で、むしろI/Oをどうするかという問題になる |
Photo21:E600ではCPU側にはPCIe x16レーンを搭載し、PCH側を自由に構成することで特定用途向け製品を作りやすくした |
Photo22:PCHの例。Intelは汎用向け製品としてEG20Tをリリースしており、その他向けに各社が独自のPCHをリリースしている |
Photo23:OKIセミコンダクタ取締役LSI開発本部長の藤田尚孝氏 |
Photo24:OKIセミコンダクタはロームの子会社であり、この関係を生かしてロームがクロックジェネレータなどのアナログ部品を、OKIセミコンダクタはデジタル部品をそれぞれ開発する形でコラボレーションしているという |
Photo25:提供される製品例。汎用品やメディアフォン、IVI(In-Vehicle Infotainment)など幅広い分野向けに製品を提供するという |
Photo26:Soft Servo SystemsのCEO兼社長のBoo-Ho Yang氏 |
Photo27:同社は産業機械向け制御装置を手がけており、従来のハードウェアベースの制御装置の代わりにSoftMotionと呼ばれるソフトウェアベースの制御システムを開発、Atomベースのマシンで64個のモータと4000点のI/Oの制御が可能であるとする |
ここから話は、もう少し先の方向に話が移った。今回は日本での講演ということもあってか、分野をIVI、メディアフォン、産業用オートメーションに絞っての内容だったが、まず自動車関連で言えば、付加価値をつけるためにトレンドが変わりつつあること(Photo30)、メディアフォンに関してはより高付加価値が求められつつあること(Photo31)、産業用に関してはEtherCATの対応が大きな目玉である(Photo32)。こうしたトレンドに迅速に対応しようとすると、従来の数年の開発サイクルは長すぎるし、ソフトウェアに関してはともかくハードウェア側は固定機能のままだから変更は難しい(Photo33)。こうした事に対する解決案がFPGAとの組み合わせであり、具体的には今年11月に発表されたAtom E600Cシリーズという事になる(Photo34~38)
Photo30:変わりつつある、というよりは以前から言われてきた今後のトレンドがいよいよ実際に実装され始めてきているという話とも言える |
Photo31:VoIPそのものはもはや当たり前で、今後はどれだけ付加価値をつけた高機能品になるか、という方向に競争が移り始めている。もっともこのあたりは国による違いもあり、日本では案外に根付いていない気もするが |
最後に、今後ともIntelは先端プロセスを利用し、このマーケットに革新的な製品を投入し続けることを表明して講演を締めくくった(Photo39)。