3DCGやデジタルコンテンツ制作の第一線で活躍するクリエイター及び研究者が世界各国から集い、互いにその成果やノウハウをシェアし合うデジタルコンテンツの国際的祭典「デジタルコンテンツEXPO2010」。同祭典内のプログラム「3DCG CAMP 2010」にて、映画『スター・ウォーズ エピソード3』や『トランスフォーマー:リベンジ』、『スター・トレック』などのCG制作に携わったILMのVFXアートディレクター、コンセプトデザイナーであるアレックス・イェーガー氏(以降、イェーガー氏)が「想像の世界を現実に」というテーマで講演を行った。
映画『スター・ウォーズ』シリーズのジョージ・ルーカス監督が"今までにない特殊効果を生み出したい"との想いから立ち上げた特殊効果及び視覚効果を専門に扱うスタジオ、ILMで15年間制作に携わってきたイェーガー氏。幼い頃に観たスター・ウォーズに影響を受け、現実に存在しない世界をデザインしたいとの想いを抱いたというイェーガー氏は、映画『スター・ウォーズ エピソード3』で、アートディレクターを務め、劇中に登場するストームトゥルーパーや戦闘機のリデザインを手掛けた。これまでの『スター・ウォーズ』シリーズ作品で表現されてきたテイストを踏襲しながら、新しいデザインへと昇華させていく作業はとてもエキサイティングだったそうだ。
また、2Dのコンセプトアートから3DCGを制作することもイェーガー氏のタスクだったそう。「コンセプトアートから3DCGを制作する際には、単に目に見える外見だけを創るのではなく、オブジェクトの中身、構造まで創造するのです」と語り、例えば、戦闘機が被弾した場合、被弾した際にどんな破片が飛散するか、被弾した傷跡はどのようなものになるのか、といった細かな部分まで作り込んでいくのだとのこと。
また、『スター・ウォーズ』シリーズの制作には、これまでに数多くのトップクリエイターたちが参加している。イェーガー氏が制作に携わり、非常に印象深かったエピソードとして「ジョー・ジョンストンがスター・ウォーズのためにデザインしたものをベースに、新しいデザインを生み出すことにチャレンジできたんです。サスペンションやタイヤに至る微細なディテールまで。特にタイヤなどはスター・ウォーズの世界観に合致するように路面の凹凸に応じて稼働するような機構を組み入れるなど、新しい要素を加えていきました」と語った。
また、エピソード1でダグ・チャンがデザインしたものとエピソード4でジョー・ジョンストンがデザインしたものを融合させ、新たなデザインを生み出すのも刺激的だったという。偉大な先人たちが残したデザインをゼロから構築するのではなく、デザイン要素のみ抽出して新たなものを創り出すという作業は、非常にタフな仕事だったのではないだろうか。