高速メモリ・インタフェース技術の開発企業である米Rambusの日本法人ラムバスは、10月19日に東京都港区の本社会議室で記者会見を開催し、Rambusの現状と次世代メモリ技術の開発状況を発表した。

Rambusでコーポレートコミュニケーションズ担当ディレクタを務めるリンダ・アシュモア(Linda Ashmore)氏

記者会見では初めにRambusのコーポレートコミュニケーションズ担当ディレクタを務めるリンダ・アシュモア氏が同社の現状を簡単に説明した。同社は高速メモリ・インタフェース技術の開発企業として1990年に2名のコンピュータ技術者によって設立された。

Rambusのビジネス・モデルは一貫しており、開発した新技術で特許を取得し、新技術を半導体ベンダや電子機器ベンダなどに有償でライセンスする、というものである。これまでDRAMベンダやASICベンダなどに高速メモリ・インタフェース技術をライセンス供与してきた。2010会計年度の上半期におけるライセンス収入は3億700万ドルである。従業員数は全世界で360名と、それほど多くはない。

Rambusの会社概要

Rambusのビジネス・モデル

Rambusの2010年における主要なできごと。DDR3メモリのワイヤボンディング接続で1,866MT/秒のデータ転送をデモンストレーションしたとの記述が目立つ

Rambusの技術担当ディレクタを務めるスティーブン・ウー(Steven Woo)氏

続いてRambusの技術担当ディレクタを務めるスティーブン・ウー氏が、次世代メモリ技術の開発状況を説明した。

Rambusは現在、2つの次世代高速メモリ・インタフェース技術を開発している。1つは、グラフィックス用メモリの「XDR2」、もう1つはモバイル用メモリの「Mobile XDR」である。それぞれの技術の概要は大原氏のレポートに詳しく述べられている。

ウー氏は記者会見で、グラフィックス用メモリとモバイル用メモリの要求仕様には共通点があり、それは「高性能」、「低消費電力化」、「コスト削減」であるとした。そしてこれらの3つの要求はお互いに矛盾する「3すくみ」のような関係にあると説明した。例えば性能を高めると、何らかの工夫なしには消費電力とコストが増大してしまう。そこでこれらをまとめた協調設計が技術開発では重要だと説明した。

メモリ設計の要求仕様と課題

ピン当たりの転送速度(性能)の向上に伴う課題

この設計思想そのものはごく普通のことで、半導体回路設計やボード回路設計などでも共通だ。これだけではほかの企業との違いは分かりにくい。Rambusがほかのメモリ技術開発企業と違うのは、半導体パッケージの入出力端子当たりのデータ転送速度を極限まで高めることで、半導体パッケージのピン数を減らし、プリント回路基板の配線層数を減らしていることだ。同じデータ転送速度を実現するときに、半導体チップそのものだけではなく、パッケージのコストとボードのコストを抑えこもうとする意思が明確なのである。

「XDR2」と「Mobile XDR」の違いは、コストと性能のバランスをとりながら高速性を追求したのが「XDR2」であり、消費電力低減の比重を高めたのが「Mobile XDR」だと言える。「XDR2」と「Mobile XDR」の違いは主に信号振幅の大きさと信号レベルの高さにあり、「Mobile XDR」は振幅が狭く、しかも、接地電位の近くで差動伝送を実行することで消費電力を抑えている。

ウー氏は記者会見で、「XDR2」のテストシリコンダイで16Gビット/秒/ピンと極めて高速な信号を送信できていることと、「Mobile XDR」のテストシリコンダイで4.3Gビット/秒/ピンと高速な信号を送信できていることを信号波形(アイパターン)を見せてプレゼンテーションした。

「XDR2」メモリ・インタフェースの概要

「XDR2」のテストシリコンダイによる送信信号波形

「Mobile XDR」メモリ・インタフェースの概要

「Mobile XDR」のテストシリコンダイによる送信信号波形

なお、記者会見後の質疑応答では、「XDR2」および「Mobile XDR」のライセンス契約について、その実績の有無を含めて明らかにしなかった。また「XDR2」技術のデータ転送速度が実際に要求される時期は2013年~2014年、「Mobile XDR」技術のデータ転送速度が要求される時期は2012年~2013年だとの見通しをウー氏は示した。