iPadに搭載された9.7インチという大型の高解像度LEDバックライトIPSディスプレイ。これには、高い視認性と快適な操作性を実現するための世界最高クラスのディスプレイ技術が採用されている。そんな魅力的なディスプレイを、是非ともノートブックPCなどのセカンドディスプレイとしても活用したい。この願いを叶えてくれるのがAvatron Softwareが開発したiPad/iPhone対応アプリ「Air Display」だ。

専用のサーバソフト(無料)をインストールしたコンピュータと、iPad/iPhone対応アプリ「Air Display」を組み合わせ、デュアルディスプレイ環境を手軽に実現。セットアップも専用パネルから直感的に行えるのが嬉しい。Windows/Mac OS Xに対応している

本レポートでは、この「Air Display」を使い、コンピュータのワイヤレスディスプレイとしてiPadを利用。各種クリエイティブソフトウェアの作業環境のさらなる効率化や快適化を模索してみたいと思う。今回は、デザイナー/クリエイターにとっての大定番ソフト「Photoshop」、「Illustrator」から、人気の音楽制作ソフトウェア「Logic Pro」、「Reason」、「Record」、そしてビデオ編集ソフトウェア「Final Cut Pro」まで、いくつかのソフトウェアを例としてピックアップしてみた。

「Air Display」では、iPadだけでなくiPhoneでの表示にも対応している。通常のデュアルディスプレイ環境と同様に、ふたつの画面を跨いでウィンドウのレイアウトを行うことが可能

Photoshop/Illustrator
~パレットをiPadに配置して限られた表示領域を有効活用~

ノートブックPCでは、画像編集やデザイン制作などを行っていると、ディスプレイが手狭に感じることが多々ある。特に、PhotoshopやIllustratorなどの多機能なソフトウェアでは、各種機能を使いこなすためのツールボタンやパレットがどうしても多くなりがち。肝心の画像やデザインの表示領域を圧迫してしまい、作業の妨げとなってしまう場合もある。そんなときには、ツールボタンやパレットをまとめてiPadに表示させておくと便利だ。コンピュータ側のディスプレイをすべて画像やデザインの表示に使えるだけでなく、様々ツールを一目で認識できるのも大きなメリットだろう。

MacBookPro+iPadのデュアルディスプレイ環境でPhotoshopやIllustratorをセットアップ。デザインや画像全体が、ツールパレットよって隠れず見渡せるのは快適だ

Logic Pro
~ミキサー/プラグイン画面をiPadに配置して効率よくミキシングする~

Macユーザーから、絶大なる支持をうけるプロフェッショナル向け音楽制作ソフト「Logic Pro」を使って、音量バランスや音色調整を行うためのミキサー/プラグイン画面をiPadに表示してみた。単一画面での作業完了とは違い、常にミキサー/プラグイン画面を表示しておけるため、いつでもすぐにミキシング作業が可能となる。そのほか、トランスポートバーやSMPTEディスプレイなどを表示し、コントロールサーフェイスとして使うのもお勧めだ。実際に使ってみた感覚ではディスプレイの移動時などに、画面のリドローがワンテンポ遅れる感じは否めないため、ウィンドウ位置の移動や更新が頻繁なものはできるだけ避けるのがポイントだろう。

Air Displayは、横向きと縦向きのいずれの画面設定にも対応しているため、Logic Proとの組み合わせでは横向き画面を採用し、ミキサー/プラグインなどの画面を表示した

Reason/Record
~ソフトウェア毎に画面を振り分けて、直感的制作環境を構築~

音楽ソフト「Reason 5」および「Record 1.5」では、各種音源やエフェクト、ミキサーなどのデバイスが、実機さながらの凝ったラック形式のユーザーインタフェースにより表示される。ラックはソフト内で利用するデバイスが増えるごとに縦方向に拡張されていくため、iPadの縦向き画面とも相性が良い。レコーディング時には、Recordのメイン画面全体が視認でき、より直感的に録音や編集作業を行える。また、Reasonラックの各種デバイスが常にiPad画面上に表示されており、タブレット式の入力デバイスとしてダイレクトにパラメーターを変更できるのも嬉しいところ。ReasonやRecordの組み合わせに限らず、複数のソフトウェアを同時に利用するシーンでは、セカンドディスプレイが、かならず大きな威力を発揮してくれるはずだ。

iPadの9.7インチ・ディスプレイ(1024×768)なら、Reasonラックの画面をまるごと表示させておくのもオススメ。ノートブックなど限られた画面領域も有効活用できる

Final Cut Pro
~ビデオ/シーケンスウィンドウの視認性を優先した作業環境を構築~

「Final Cut Pro」は、多くのプロユーザーからも愛用されている高機能ビデオ編集ソフトウェア。初期状態のレイアウトでは、ビデオのプレビューやシーケンス(編集)などの画面に加えて、プロジェクトブラウザやエフェクトブラウザ、各種ツールバーなどが1画面に納められており、13インチ程度の画面ではやや手狭な印象を受ける。そこで、iPadにブラウザなどの画面を配置することで格段に快適なビデオプレビュー環境を構築することができた。ワイヤレスによりコンピュータ画面の拡張できるので、編集ブースとは離れた場所で、エディットの状況を確認するなどの利用方法も面白い。撮影現場などのモバイル環境での編集作業を余儀なくされるようなシチュエーションで活躍してくれそう。

ノートブックの限られた画面でも快適にビデオ編集が行えるように、ブラウザ/リストなどの画面をiPad側に配置してみた。ビデオシーケンス/プレビュー画面もより大きく表示することが可能となる