ビジネス現場でのiPad/iPhone利用が広がっている。2007年のデビュー当初こそ必要な機能不足等の理由により導入が推奨されなかったiPhoneだが、現在ではiPad/iPhoneともに企業や教育現場で大量導入するケースが見受けられたり、そうしたニーズに対応すべく、iPad/iPhone用のソリューションを開発するベンダーも多数登場してきた。

そうしたiPad/iPhoneにまつわるビジネス現場の変化は米Wall Street Journalの8月24日(現地時間)のレポートなどに垣間見られる。そのレポートによれば、例えば、米シカゴにある法律事務所のSonnenschein Nath & Rosenthalでは、当初iPhone導入を見送っていたが、今年4月のiPadローンチでは10台のiPadを事前予約していたほどだという。現在同社ではiPad経由での内部システム接続の仕組みを用意しており、来年にはノートPCの代替として50名以上の弁護士がiPadを使ってシステムを利用することになるという。また、医療機器販売などで知られる米Bausch & Lombでは、営業用の社内iPadアプリを開発し、現在では50名以上の従業員がiPadを利用している。医療現場の例では、米サンフランシスコ周辺のベイエリアに病院施設を展開するKaiser Permanenteが、医療機器メーカーが開発したシステムを用いてCTスキャンやX線イメージ、医療記録などをiPad経由でチェックするフィールド実験を行っているという。

また比較的最近のニュースでは、米Morgan Stanleyが顧客向けのiPad/iPhoneアプリを公開したことが話題になっている。これは同社の出す調査レポートの専用リーダーにあたるもので、顧客サービスの一環だ。内部利用とは異なるが、iPad/iPhoneにおける顧客ニーズの高さを示すものとなるだろう。

これらはほんの一端だが、iPadをビジネス現場に活用しようという流れはあちこちで起きているようだ。例えば、1万1,000本以上あるiPad専用アプリのうち、500がビジネス用だという。そのうちの1つで、Citrix Systemsが開発した企業の内部システムへとアクセスを可能にする無料アプリの「Citrix Receiver」は、累計ダウンロード数が145,000を突破している。これがすべて現場でのiPad活用につながっているとは思わないが、相応の関心の高さがあることはうかがえる。米Apple COOのTim Cook氏は7月のタイミングで「Fortune100企業の半数がiPadの現場展開またはテスト導入を行っている」という話を紹介しており、大企業内部でも利用が浸透しつつあるようだ。