宇宙航空研究開発機構(JAXA)は7月9日、小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS(イカロス)」の運用において、セイル展開後に実施した精密軌道決定により光子加速を確認したことを発表した。
太陽光圧による推力は1.12mNで、この値についてJAXAでは想定通りの値としている。
図1は、2010年6月9日のセイル2次展開運用時の、IKAROSの視線方向速度の実測値(ドップラー計測結果)と計算値(光子加速無し)との差を表したもの。計算値は光子加速を加味していたいため、光子加速が無い場合はこのグラフが水平になり、光子加速が有る場合は傾く。2次展開を実施した9時36分(世界標準時)前後の約1時間は展開運用のためデータ欠損しているが、その前後で明らかに傾きが変化していることが見て取れる。
また、図2は6月9日以降のIKAROSの軌道決定結果と、設計段階でのセイル光学パラメータ(セイル実行断面積比とセイル鏡面反射率)を比較したグラフ。
今回、軌道決定の結果により推定された太陽光圧による推力(1.12mN)を実現するセイル光学パラメータの組み合わせが、青色の曲線で描かれている。
また、四角で囲った領域は、セイル製造時の設計値から推定される、面積比と反射率の予想範囲を示したもの(セイルは軌道上で光圧の影響を受けて変形するので、同図のように設計点からある範囲をもって分散する)で、これより、IKAROSが設計通りの光子加速能力を発揮していることが理解できる。