シマンテックは7月8日、都内で記者説明会を開催。5月に同社社長に就任した河村浩明氏が、パートナー施策の強化を中心とした今後の日本市場における事業戦略に関する説明を行った。
河村氏は説明会の冒頭で、同社が「ビッグシフト」と呼ぶIT環境のクラウド化の流れについて言及。「19~20世紀は、電力を自家発電で確保していたが、それから20年ほどの年月を経てよそ(電力会社)から電力を買うようになった」という産業構造の変化に触れ、現在はIT環境にもこのような大きな変化が訪れていると語った。
同氏はこのような流れを背景に、企業におけるIT投資に関して「従来型のIT投資(ハードウェア、ソフトウェアライセンス、コンサルティング、保守サービス)は今後減少し、クラウドサービスや(コンサルティングを含む)ハイレベルサービスへの投資が伸びる」と説明。IT部門の役割についても、「統合的なこれまでの"システム中心"の考え方から、情報共有ニーズや非構造化データの増大、クラウド環境への移行などへの対応のために"情報中心"の考え方に重点が置かれるようになる」という考えを示した。
同社の事業戦略は、「コンシューマセキュリティ」「エンタープライズセキュリティ」「データ保護」「ストレージ管理」の4つの分野においてこのようなトレンドに対応することが大きな柱となっているが、とりわけ日本市場では「売上の7~8割を占めるなど、事業の核となっている」(河村氏)とされるパートナー向けの戦略が重要なカギを握る。
同社はそれぞれの領域(アプリケーションやミドルウェア、データベース、仮想化、ネットワーク、OS、ハードウェアなど)にまたがる「パートナーエコシステム」をベースに、"水平展開型戦略"の事業を展開。河村氏は「IT業界は(ハードウェアベンダーがソフトウェアベンダーを買収したり、その逆が起きたりと)統合化といった"垂直統合"の流れがあるが、これが必ずしも正解とは限らない」とし、同社としては今後も「様々なパートナー企業と幅広く協業する"ニュートラルベンダー"」として存在価値を高めていくという。
具体的には、これまでは取引規模に応じて支援レベルなどの差別化を行っていたパートナー向けプログラム(シマンテック パートナー プログラム)の内容を、「パートナー各社の得意分野に着目し、特典などのレベルを設定する」(河村氏)ようにする。この新パートナー向けプログラムへの移行は年内から実施され、来年の4~6月をメドに全面的な運用が開始される予定だ。
同社は今後、このような仕組みのもとで、「これまでは手薄だった」(河村氏)とされる年商1000億円以上の企業(同社では「Big Enterprise」と呼ばれる)に対する"ハイタッチ営業"を強化するなどし、売上の拡大を図る。
なお、シマンテック米国本社が5月に発表したベリサインの買収については現在規制当局などにおける承認プロセスの段階にあるが、日本ベリサインとの今後の関係について河村氏は「(米国本社を親会社とした)兄弟のような関係になる」としながらも、相乗効果を生むための具体的な施策等については「今後検討する」という発言にとどめた。