Freescale Semiconductorは、6月21日(米国時間)より開催している同社のテクノロジーフォーラム「FTF(Freescale Technology Forum)Americas」において、ARM Cortex-M4プロセッサをベースとした32ビットマイコン「Kinetis」ファミリを発表した。同ファミリは、ColdFire+ファミリを補完するもので、ARMコアとミクスドシグナル技術を融合させたマイコンとなっている。

Kinetisには、ピン、ペリフェラル、およびソフトウェアの互換性を持つ7ファミリが用意されており、全製品ラインナップは200種類以上が予定されている。

フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン代表取締役専務の伊南恒志氏

ARMコアを採用したマイコンの提供について、フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンの代表取締役専務の伊南恒志氏は、「2009年、半導体市場は大きく落ち込んだが、年の後半に入り急速に回復が始まった。それは組み込みの市場も同じで、こうした時期に、さらなるグローバル市場への展開などを図るカスタマの手伝いをしたいと考えていた。現在の組み込みはすそ野が拡大しているが、そうしたアプリケーションの拡大、高機能化に伴い、ソフトウェアの開発コストの増大が進んでおり、プロセッサコアは早期に選定したいというニーズがあった。そうなってくると潜在的にARMコアを選択するニーズは無視できないものとなり、これまでの68KベースのColdFire、PowerベースのQorIQとKinetisという3つの選択肢を用意し、カスタマのこれまでの資産を守りつつ、新しい取り組みを行うことを決めた」と説明する。

Kinetisを加えたFreescaleのマイコンラインナップ

Kinetisは、同社の90nm薄膜ストレージ(TFS)技術、およびサイズ設定が可能なEEPROMであるFlexMemory機能をベースとしている。また、KinetisとColdFire+は、ソフトウェア開発プラットフォームおよび超低消費電力モードが共通化されており、カスタマは最終製品の要件に応じたソリューションの選択が可能だ。また、最大動作周波数は180MHzで、動作時電流は200μA/MHz以下、スタンバイ時は500nA以下を実現している。

Kinetisシリーズの共通機能各種

ARM Cortex-M4は、ARM Cortex-M3の上位互換コア。M3を信号処理用に拡張したもので、1サイクル実行の32ビット積和演算(MAC)ユニット、DSPおよびSIMD演算命令への対応、単精度浮動小数点演算ユニットの追加などが図られている。また、Freescale独自の機能として、複数のマスタ/スレーブの同時バス・アクセスを可能とするクロスバスイッチやDMAコントローラ、各種省電力モードなどがプラットフォームとして追加されている。

Cortex-M4の概要とプラットフォームとしてFreescaleが追加した特長

7ファミリは、搭載する機能およびメモリ容量によって分けられており、ファミリ別の追加機能として主なものとしては、「DRAM Controller」「Hardware Temper Detect」「Dual CAN」「Encryption」「Ethernet(IEEE 1588)」「Floating Point Unit」「NAND Flash Controller」「LCD(Segment/Graphics)」「USB OTG(Full Speed&High Speed)」の9つがあり、これらを搭載しているか否かで、上位から「K70」「K60」「K50」「K40」「K30」「K20」「K10」に分別され、「K70」および「K60」はネットワーク接続機器向け、「K50」はヘルスケア機器向け、それ以下はモータコントロール向けというように想定しているという。

Kinetisのファミリ別の追加機能

フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン ネットワーク、インダストリアル、コンスーマ・マーケティング本部インダストリアル・マーケティングの喜須海統雄氏

気になるのは従来のColdFireの存在だが、そちらは今後、アプリケーションに特化した製品を開発していく計画としており。Kinetisは汎用マイコンとしての位置づけで、幅広いバリエーションを用意し、カスタマのニーズに対応していくとする。また、「今回のラインナップ拡充により、カスタマの選択肢が広がったのが、市場に対してのもっとも大きな意味を持つ」(フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン ネットワーク、インダストリアル、コンスーマ・マーケティング本部インダストリアル・マーケティングの喜須海統雄氏)としており、今回の7ファミリに加え、新たなファミリの開発も進めていく計画があることを明らかにした。

各種の開発環境も併せて提供することで、開発負担の軽減を狙う

なお、サンプル出荷は2010年第3四半期(7~9月)より順次開始される予定で、12カ月以内にすべてのラインナップが出揃う予定としている。第3四半期に登場するのは、128KB~512KBのメモリ容量を搭載した「K40」「K30」「K20」「K20」および「K60」の各種製品約70品目で、2011年初頭からの量産が予定されている。