SNS大手の米Facebookの年間売上が話題になっている。英Reutersの6月17日(現地時間)の報道によれば、2009年の売上はユーザー数や広告出稿増加もあり、8億ドルと当初の予想を大幅に上回る規模になった。同社は上場企業ではないため、本来であれば決算の数字は公開されないのだが、ここまで騒がれる理由の1つにちらつきはじめた株式上場(IPO)の姿がある。

米Bloombergによると、FacebookのディレクターであるMarc Andreessen氏が昨年7月に、「2009年の年間売上が5億ドルに達することは固い」と発言していたそうだ。だとすれば、8億ドルという売上は中期時点での目標額を大幅に上回るもので、その急成長ぶりがうかがえる。

シリコンバレーの中心地、米カリフォルニア州パロアルトにある米Facebook本社

ここで、8億ドルという売上がどの程度のものか見てみたい。例えば、日本の同業者であるミクシィの2010年3月期連結決算は売上高が136億円である。現在の為替レート(1ドル=約91円)でFacebookの売上を換算すると約730億円となり、約5.4倍の規模となる。急成長で話題のグリーが2009年6月期決算で139億円、ディー・エヌ・エーが2010年3月期決算で481億円であることを考えれば、かなりのレベルであることがわかるだろう。

では、米国企業との比較はどうだろうか? ネット企業との比較という意味では、米Amazon.comの年間売上が268億ドル、米Googleで249億ドルであり、遠く及ばない。米Yahoo!でも65億ドルだ。ところが、GoogleがIPO初期の業績と比較すると、今のFacebookの立ち位置がよくわかる。

Googleが株式上場を行ったのが2004年8月、その直前の2003年度決算における売上は9億6,100万ドルだった。上場前であるにもかかわらず、当時のGoogleの業績は先ほど挙げた競合2社と比べても遜色なく、インターネット企業がここ5~6年程度でいかに急成長を遂げてきたかがわかる。FacebookはこのGoogleの当時のスタートラインに立っているのだ。

そうなると、当然話題になるのはFacebookのIPOだ。これに関して、Facebook創業者でありCEOのMark Zuckerberg氏が米Wall Street Journalのインタビューで面白いコメントを語っている。3月に掲載されたこのインタビューで、同氏は「われわれは最終的にはIPOすることになるだろう。それが投資家や従業員らとの約束だからだ。だが、決して焦っていない」という。

同氏は「資金が逼迫した状況とそうでない状況で、IPOの持つ意味は違ってくるだろう」とも説明しており、現状のFacebookは急激な資金調達を必要としておらず、市場動向を見極めたうえでIPOへと進んでいくことを匂わせている。

WSJが関係者らの話によれば、Facebookの投資家らは同社のIPOを2011年と見ており、その市場価値は350~400億ドル程度と見積もっているようだ。また、FacebookのIPOは金銭的な問題だけでなく、ユーザー数が増加してインターネットでの発言権が強まるなかで、「非上場企業にインターネットの重責やユーザー管理を任せていいのか?」といった批判を交わす役割も担う。とかくI、「PO冬の時代」と言われて久しいシリコンバレー期待の新星だけに、周囲からの注目は否が応でも集まることになる。