設立1周年を迎えたOESF

Open Enbedded Software Foundation(OESF)は4月21日、これまでの活動や成果、ビジョンなどの紹介を行う「Android Steps Ahead 2010/Tokyo」を開催した。キーノートトラックでは、Androidを搭載した携帯電話以外のさまざまな機器を用いることで実現されるデジタルホームについての紹介が行われたほか、近未来のリビングルームでのAndroid活用に向けたメッセージが語られたので、これをレポートしたい。

OESFのミッションとビジョン

そもそもOESFはGoogleの提供するAndroidを組込機器向けに活用することを目的として2009年2月に設立された組織で、加盟企業は設立時の23社から2010年4月までの約1年で73社までに拡大している。また、その活動オフィスも日本のほか、台北(台湾)、ソウル(韓国)、上海(中国)、ホーチミン(ベトナム)と海外にも設立され、加盟企業の国籍も日本のほか、米国、カナダ、韓国、台湾、ベトナム、インドとグローバル化が進んでいる。

OESFのオフィスと国籍別企業

OESF代表理事の三浦雅孝氏

キーノートセッションのメインスピーカーであるOESF代表理事の三浦雅孝氏は、Androidについて「iPhoneやAndroidを搭載したスマートフォンの登場により"Career Free"、"New Application Market"、"Cloud Computing"というものが拡大した。だが、これ以外にもiPhoneにはなく、Androidにあるという特徴がある。それはAndroidがオープンソースで、ハードウェアの制約がないことだ」とiPhoneとの違いを語る。

すでにAndroidを搭載したスマートフォンは全世界で14機種が販売されており、1日あたり6万台が出荷されており、「もはやニッチな存在ではない。組み込み分野にも、Androidを取り入れることで、よりスタンダード化と差別化が推進されることとなるほか、クラウドへの連携もしやすくなる」(同)と組込機器へAndroidを搭載することで、さまざまな恩恵を受けられることが強調された。

Android活用によるデジタルリビングの風景

組込機器としてAndroidをベースとしたものも多数登場している。例えば電子ブックリーダー(eBook)であるnookやSpring DesignのAlex、カナダHome JinniによるConnecTVといったいわゆるデジタルホーム分野向けの機器などが登場している。eBookはAndroidを活用することで、単に書籍を購入して読むという機能だけでなく、動画や音楽の再生も可能となるマルチメディアプレーヤとしての役割も担えるようになるほか、ネットTVではHDの動画を見つつ、IP電話が誰からかかってきたかを表示することなどが可能だ。

nookとAlexを掲げる三浦氏

また、そのほか、デモとして仏ArchosのMIDを用いたデモや中国で活用されているSTBなども紹介された。MIDは、大容量HDDを搭載しており、単独で動画を大量に入れておくことが可能だが、HDMIインタフェースを搭載したクレードルに接続することで、家庭内のTVに接続し、大画面での視聴も可能となる。一方のSTBは、Intel C3100を搭載したもので、1080pをサポート、Bluetoothによるキーボードやリモコンなどを使って操作することが可能だ。このキーボードは、ユニークな構造をしており、表面はキーボード、裏面にタッチパッドを備えているほか、側面にビデオ再生用の各種ボタンが配置されている。またリモコンはかなりWiiリモコンに似た作りで、リモコンを振ることでマウスカーソルを移動させることが可能だ。

ミップス・テクノロジーズの川口淳氏

MIPS Technologiesの日本法人であるミップス・テクノロジーズの川口淳氏は、「Androidが家の中のさまざまな機器に入ることで非常にエキサイティングな体験が可能になる」と語るホームエンタテイメント分野だが、OESFが家庭内のAndroid搭載機器として期待しているのはなにもそういった分野のみではない。「ヘルスケア分野にも大きな期待がかかる」(三浦氏)としており、KDDI研究所の伊藤篤氏による体組成計とAndroidスマートフォンをリンク、BMI値や体重をスマートフォン経由でSTBへ送りTVで表示して見せた。「Androidを活用することで、各種機器で同じアプリケーションを用いることが可能だ。それはIPネットワークでもモバイルネットワークでもケーブルネットワークでもクラウドを経由して家だけでなく、学校や職場でも活用することが可能となる」(伊藤氏)であり、同じアプリケーションを同じ感覚で使えることに意義があることが強調された。

家の外でもAndroid

さまざまな家電への搭載などで強みを発揮するとされるAndroidだが、その可能性は家の中に留まらないというのもOESFの主張だ。特にカーエレクトロニクスとしての活用が期待されている。

ミックウェアの山内健太郎氏

何故カーエレにAndroidか。この疑問について、ミックウェアの山内健太郎氏は、「次世代のクルマを考えた上でのポイントは"安全・安心"と"環境"。今までの自動車業界は"走る""曲がる""止まる"の3つの基本機能が求められていたが、安全や環境を意識した場合、4つ目の機能として"つながる"というものが求められることとなる」と説明する。車内でつながる機器としてはナビゲーションのほか、スマートフォンや携帯電話、携帯ゲーム機などが想定される。一方、車外とのつながるということを想定すると、車車間通信のほか、走っている街中の店舗が開催するイベントなどとのやり取りを行う「街との通信」、パークライドの考え方に基づく公共交通機関の状況確認をリアルタイムで行う「公共交通機関との通信」、駐車場の空き情報などを確認する「民間企業などとの通信」といったように、ありとあらゆるものとの情報のやり取りが必要となることとなる。

そういった状況になれば、「もはやクルマは単なる走るだけの存在ではない」(同)ということであり、さまざまなものとつながって動くモノへと変化することでもっとも重要となるのが通信部分であり、そうした通信面をAndroidがカバーすることで、より"つながる"ということが強くなるということが強調される。

クルマがあらゆるものと"つながる"ことで、今までとは違う存在へと変化していく可能性が出てくる