業界標準のハイエンド3DCGツール「3ds Max」や「Maya」、「Softimage」などを開発しているオートデスクが新製品を発表した。オートデスクにて行なわれた記者発表会では、同社マーケティング本部 メディア&エンターテインメント担当 一ノ瀬真一郎氏とソフトウェア本部 AEマネージャー 門口洋一郎氏によって、プレス向けのデモンストレーションが行なわれた。なお、今回発表された製品群の情報は、北米版が元となっているため、日本語版では変更される可能性もある。

今回発表されたオートデスクの新製品群

最新版「3ds Max 2011」でオブジェクトにテクスチャーを描いているところ

「Maya 2011」はシェアを伸ばしつつあるMac OS Xでも動作するようになった

バージョン「2011」は北米で4月7日発売開始

今回は以下の7製品が発表された。北米及び日本での発売日はすべて2010年4月7日だが、3ds Maxが含まれる3つの製品のみ日本では発売日、価格ともに未定となっている。

製品名 価格 発売日
Autodesk 3ds Max 2011 価格未定 発売日未定
Autodesk Maya 2011 53万5,500円 2010年4月7日発売
Autodesk Softimage 2011 57万7,500円 2010年4月7日発売
Autodesk MotionBuilder 61万4,250円 2010年4月7日発売
Autodesk Mudbox 2011 11万5,500円 2010年4月7日発売
Autodesk Entertainment Creation Suite 2011 価格未定 発売日未定
Autodesk 3ds Max Design 2011 価格未定 発売日未定

「Autodesk 3ds Max 2011」、「Autodesk 3ds Max Design 2011」

映画や3Dアニメーション、ゲームなど、幅広い業界で使われている3DCGツールのベストセラー。モデリングからアニメーション、レンダリング、エフェクトなど、すべての作業を1本で行なえる。UIは英語/日本語の切り替えが可能。姉妹品の「Autodesk 3ds Max Design 2011」は、建築や製造、広告、印刷業界用に使われる機能に特化した製品。今回のバージョンに追加された「スマートマテリアルエディター」では、より複雑なマテリアルを作れるようになった。「ノードベース」と呼ばれるこのエディターは、ツリー構造になっていて視覚的に理解しやすいのが特徴。また、UIの「ダイレクトマニュピュレーション」も新設計された。モデリング中にマウスでターゲットすると、その周囲にボタンや矢印が表示される。これは、クリエイターのマウス移動量を極限まで減らせるように考えて開発されたというUIだ。その他にも、複数のクリエイターでひとつの作品を作れる「コンテナー」や、UIのフルカスタマイズ、ソリッドデータの完全対応、HDRや高解像度動画を編集できる「Toxik」の統合など、多くの機能が追加された。対応OSはWindows 7、Vista、XP(32/64bit)。

スマートマテリアルエディターの画面。ノードをつなぎ合わせてマテリアルを作成中

「Toxik」が本体内に統合され、新たに「Composite」と呼ばれる機能になった

「3ds Design 2011」には「3ds Max」には入っていない「ライティング分析システム」搭載

「3ds Design 2011」は、このような建築用CGの作成に活用できる

「Autodesk Maya 2011」

3ds Maxと並んで高い人気を誇る3DCGツール。モデリングやアニメーション、レンダリング、エフェクトなどが可能。UIは英語と日本語に対応しているが、日本語版のヘルプはウェブサイトで提供予定とのこと。「Maya」の特徴は、近年増えつつあるLinuxとMacに対応しているところ。Maya 2011では、UIが一新され、非常に画面が見やすくなった。発表会で行なわれたデモでは、パーティクルと流体を同時に扱える新機能「ニュークリアス」が披露された。その他の機能として、キャラクターにより人間らしい動きをつけられる「フルボディIK」や、異なる身長や体格の3DCGにボーンを埋め込める「リターゲット」機能なども紹介された。対応OSはWindows 7、Vista、XP(32/64bit)、Linux(64bit)、Mac OS X 10.6.2(32/64bit)。

リアルなロケットの噴射。これは流体とパーティクルを使って描かれている

改良された「スキニング」機能。ボーンの動きに沿って肌の動きやシワもよりリアルになった

「Autodesk Softimage 2011」

Autodesk 3ds Max 2011、Autodesk Maya 2011などの3DCGツールと同様、モデリングからレンダリングまで行なえる統合ツールで、ゲーム開発に使いやすい考慮が加えられている「Autodesk Softimage 2011」。元はAvid社の製品であったが、2008年に事業部をAutodeskが買収。今回のバージョンではAutodeskの製品として、他のツール群との連携作業が容易になっている。紹介されたデモは、キャラクターの「リップシンク」機能。これは従来からある音声に合わせてキャラクターのクチをアニメーションさせる技術だが、本バージョンでは音声だけでなくセリフの文字情報も扱えるようになった。これはゲームのローカライズ時に有効な機能だ。例えば、日本人が描いたキャラクターでも、英語の音と文字さえあれば、まるでネイティブスピーカーのようなクチの動きを再現できる。近年、日本のゲーム企業は海外での販売も視野に入れゲームを開発しているため、これは大いに歓迎される機能だろう。対応OSはWindows 7、Vista、XP(32/64bit)。

クチの動きを設定しているところ。西洋人キャラクターに日本語をしゃべらせている

「ICE」と呼ばれるビジュアルプログラムを使い、高度な3DCGを作成できる

レンダリング環境が機能強化。外部レンダラーとの連携も向上している

「Autodesk MotionBuilder 2011」

3DCGツールで作成したキャラクターの「動き」を作成するリアルタイムアニメーションツール。3DCG映画やゲームなどで広く使われている。UIは英語のみで、ヘルプはウェブサイトにて提供される予定だ。今回のバージョンはハードウェアレンダリングに対応。会場では前バージョンとの比較を行なったが、FPSが13から46にまで上がった。対応OSはWindows 7、Vista、XP(32/64bit)。

3DCGのキャラクターを動かすためのツール

3Dの対戦格闘ゲームの開発などでも威力を発揮する

「Autodesk Mudbox 2011」

粘土をこねたり、絵の具で絵を描くように、直感的に3DCGを作成できるツール。UIとヘルプは英語のみ。デザイナーやアーティストが、3DCG作品を簡単に作れるように設計されている。また、マルチレイヤーデータを持たせたまま「Adobe Photoshop」で開くことも可能。対応OSはWindows 7、Vista、XP(32/64bit)、Mac OS X 10.6.2(32/64bit)。

3DCGが直感的に作成できるツール

作成した3Dデータを他のツールに持って行ける。写真では「Maya」にデータを取り込んでいる

「Mudbox 2011」でUVマッピングの展開を行なっているところ

「Autodesk Entertainment Creation Suite 2011」

3ds MaxかMaya、Softimageのいずれかと、MotionBuilderとMudboxがバンドルされたパッケージ。それぞれ3本を単品で揃えるよりも低価格で購入できる。対応OSはWindows 7、Vista、XP(32/64bit)