システムを運用するうえで何らかの問題が発見された場合には、次のような7ステップを踏むとよいでしょう。

1.測定基準の選択

課題発生を迅速に把握するために、観測する測定基準を選択します。

たとえば、ユーザー業務のパフォーマンスを分析するにあたって、業務処理時間のほか、業務処理時間に影響を及ぼすと考えられるシステムのレスポンスタイムや、エラー発生件数といった基準を特定します。

2.課題の特定

通常業務処理を行い測定対象の基準値を観測し、課題を特定します。

たとえば、販売管理部門のデータ処理時間が想定していた処理時間よりも、大幅に超過しているという数字が測定された場合、販売部門では残業が多く発生していたり、処理が滞っていたり、次工程への情報の伝達がスムーズに行かないといった課題が発生していると推測されます。

3.対象取引の特定

さらに観測した数字間の関連を分析することにより、施策を実施できるレベルまで課題を落とし込んでいくことも可能です。

簡単な例を使って見ていきましょう。

販売管理部門の作業時間を測定してみると、標準時間8時間に対し、実際作業時間は10時間でした。2時間という数字だけでは、どのような施策を実施すると差異を解消できるかは判明できません。

作業の内訳を見てみると、標準では販売伝票処理4.8時間、問合せ対応時間2.0時間、レポート作成時間1.2時間と想定していたのに対し、実際にはそれぞれに、6.8時間、2.0時間、1.2時間掛かっていたとすると、販売伝票処理時間に問題があると推測されます。そこで、さらに処理件数と作業時間との関係を分析すると、標準も実績も20件だとすると、問題は1件あたりの処理時間にあることが推測されます。

図2: 販売管理部門担当者作業内訳

ここまでくると、1件あたりの処理時間が何に影響されているのかを特定することにより、課題解決の方向性がさらに明確になってきます。

たとえば1件あたりの標準時間0.24時間は、システムからの平均レスポンスタイムが0.2秒、エラー発生件数が1件を前提としており、これらの数字は実績値も同じであった場合には、ユーザーによる操作が遅いことが問題であると推測することができます。

4.優先順位づけ

前述のような手順で課題を把握することはできますが、今回の例のように課題が1つであるということは少なく、多くの場合、複数の課題が存在し、かつ相互に関係し合っています。そこで、課題の中での緊急性や重要性などを基準に優先順位づけを行います。

5.原因と対応施策の特定

優先順位づけをした各課題に対し、その課題を引き起こす原因を特定し、対応策を決定します。

たとえば、ユーザーによる操作が遅いことの原因には、画面の構造、運用ルールの複雑さ、便利な機能を使いこなせていない、習熟度が低いといったことがあげられます。地域別分析や部署別分析などを通して、その部門だけで発生している現象なのか、それとも全社的に発生している現象なのかによって、ある程度問題の所在を推測することも重要です。

さらに定性的な評価を行うことで、より確度の高い仮説を立てることが可能となります。たとえば、ある特定部門だけ入力処理時間が掛かっており、さらに、この部門の担当者が交代したタイミングで処理時間が大幅に増加していたという場合には、新しい担当者へのスキルトランスファーが不十分であることが原因として考えられます。

ここまで原因が特定されてくると、有効な施策を決定することができます。

担当者の入力スキルを向上させるためには、トレーニングを実施する、分かりやすいマニュアルを提供する、サポート体制を強化するといった施策が考えられますが、他部署の担当者には同様の問題が発生していないのであれば、マニュアルを充実させるよりも、担当者のところで直接サポートした方が効果的である可能性があります。画面操作にも不慣れな担当者がマニュアルを見ながら処理をすると非効率だからです。

6.施策の実行

施策の特定ができたならば、これを実行に移します。

7.結果の測定

施策を実行した結果、業務処理時間等にどのような影響があったのかを計測し、効果を測定します。

多くの企業はトレーニングやマニュアルの効果を測定する際、満足度といったユーザーの主観のみをアンケートで集計しています。しかしながら、トレーニングやマニュアルがわかりやすいことよりも、それらがいかに業務効率を向上させるかが重要ですので、ユーザーパフォーマンスに与える影響を測定することが有用となります。この測定の結果、効果が出ないといった場合には、原因の特定などに誤りがあることが考えられるため、再度見直しなどを行います。

このようなアプローチを取ることにより、課題を迅速に把握するとともに、効果のある施策の実施が可能となります。