Xilinxは12月8日(米国時間)、同社のターゲット・デザイン・プラットフォーム(TDP)として、Virtex-6向け開発キット3製品およびSpartan-6向け開発キット3製品、計6製品を発表した。
それぞれ、通信分野、組み込み分野、DSP処理分野向けに特化したリファレンスデザインを搭載し提供され、Spartan-6/Virtex-6 Embedded KitおよびSpartan-6 Connectivity Kitがすでに受注を開始、それぞれ価格は995ドル、2,495ドル、2,495ドルとなっている。また、Virtex-6 Connectivity Kitは2010年1月より受注を開始し、2,995ドルで提供される予定。なお、Virtex-6 DSP開発キットは前述の2製品同様、Xilinxの評価ボード「Virtex-6 LX240T ML605」が同梱されるが、Spartan-6 DSP開発キットは前述2製品が用いる評価ボード「Spartan-6 LX45T SP605」ではなく、Avnetの提供する「Spartan-6 AS150T」が同梱される予定で、それぞれ2010年1月および同3月に受注を開始する予定としている。
こうした特定ドメイン向けの開発キットを提供することについて、日本法人の代表取締役社長であるSam Rogan氏は、「デバイス単体の開発だけではなく、システムのデザインまですることがFPGAでは重要」とし、現在の市場環境を鑑みると、限られたリソース内で、より多くの仕事が求められており、開発の簡略化が可能となるTDPを活用することで、そうした要求への手助けができるようになると説明する。
特にこの3つの分野の提供においては、Xilinxのプロダクトマーケティング担当ディレクタのBrent Przybus氏は、「TDPにとって、次の段階に入ったことを意味している」と説明、Avnetがボードを提供することについて、「エコシステムの一環として考えている。すべてを自前でやろうと思えば時間もコストもかかる。そういった意味では日本では日本の市場を良く理解している東京エレクトロンデバイス(TED)などにボードを開発してもらっている」とし、よりシンプルな環境の提供と、サードパーティによるエコシステム全般の強化を次世代の足がかりにするつもりだとする。
この次世代の足がかりというのは、今回のソリューションが特定"分野"向けということに起因する。同社はさらに上の領域「マーケット特化」のソリューションの提供を行うことも計画している。例えば2009年11月に開催されたInter BEE 2009において、同社はブロードキャスト用に特化したソリューションを公開した。こうしたマーケット特化型のソリューションをリファレンスボード、もしくはリファレンスボードに機能を拡張するために追加するMFC(FPGA Mezzanine Card)の形態で提供されることが予定されており、2010年は1月、2月、3月と順にマーケット特化ソリューションの提供を予定しているという。
Embedded KitおよびConnectivity Kitには、ISE Design Suite 11.4のEmbedded Editionのフルバージョンが同梱されるほか、それぞれの分野に応じたSDKやツールキットが提供されるため、カスタマはこうしたソフトを評価ボードおよびPCを用いてものの10分もあれば活用を開始することができる。例えば、Embedded Kitのリファレンスデザインには、32ビットのRISCソフトコアである「MicroBlaze」が搭載されているほか、IPとしてイーサネットMAC、DDR/DDR2/DDR3/LPDDR(最大800Mbps)のコントローラブロックなどが搭載されているため、「ASSPを用いて帯域幅を最大化するためのデータ圧縮処理などでは難しかった圧縮速度の向上やCPUとの組み合わせによる差別化が可能になるため、プロセッサのサブシステムの設計などが不要になるため開発期間の短縮が可能になる」(同)という。
また、Connectivity Kitではシリアルトランシーバを内蔵しているため、さまざまな通信インタフェースによるブリッジなどが可能となる。例えば、片方をPCI Expressにし、IPベンダであるNorth West Logicが提供するDMAエンジンを介して、システムの帯域幅を最適化、XAUIインタフェースとリンクする、といったことが可能となり、「より機器同士の通信に対する最適化が可能となり、かつ処理やスループットを最大限に引き出せているかの検証が可能になる」(同)と説明する。
Connectivity Kitの概要 |
Virtex-6版のリファレンスデザイン |
Spartan-6版のリファレンスデザイン(基本構成はVirtex-6版と同じだが、トランシーバ性能がことなるため、こちらはXAUIではなく、GbEのブリッジとなっている) |
こうした可能性に対し、同氏は「Xilinxがやろうとしていることは、相対的なソリューションとして、あたかもASIC/ASSPを使うかのようにFPGAを活用し、かつ柔軟性を持たせることで、カスタマが差別化領域に注力できることを助けること」と述べており、Velilog-HDLやVHDLを知らないような一般的なソフトウェア開発者がシステムの開発を行う際、すでにそうした目的にFPGAが構成されているため、(VerilogやVHDLといった)ハードウェアの知識を知らなくても、容易に開発を進めることが可能になることを強調する。
一方のDSP開発キットにはISE 11.4のSystem Editionが同梱されている。こちらは、SDKなどは同じだが、DSPを扱うためにシステムジェネレータなどが入っており、MATLAB/Simulinkなどとの連動が可能となっている。
ちなみに、評価ボードが同じことについて同氏は、「後々、カスタマ側で組み込みネットワークのように統合できるように配慮しているため」と解説してくれた。
今回の特定分野向けソリューションの提供により、よりVirtex-6やSpartan-6の活用に道が拓けた感じではあるが、現在市場に多く流通し、さまざまな機器に採用されているのはVirtex-5やSpartan-3などの既存FPGAである。そうしたFPGAにも今回のようなソリューションの提供を考えていないのかという疑問をぶつけたところ、「この取り組みは、開発サイクルの初期において、面倒な部分を排除/省略しておくことで開発効率を向上させようという考え方であり、すでに多く使われているものに当てはめる方法ではない」(同)としたが、今後の既存FPGAファミリの拡張などの際には可能性があるとした。