国立情報学研究所(NII)は、シャープと共同でスクリーンやディスプレイに表示された映画などの映像の盗撮に対し、人間と撮影機械の分光感度特性の違いを用いて、撮影映像のみノイズを乗せる技術を開発したことを明らかにした。

映画の盗撮に関しては、従来から電子透かしを用いて、映像に管理情報を埋め込むことで、盗撮映像がどこでいつ行われたかを特定する技術が用いられてきた。しかし、この場合、盗撮映像そのものは撮影可能であり、映画館などに監視システムなどがない場合、盗撮者の特定も困難であった。

電子透かしを用いても、録画行為そのものを防止することはできない

今回NIIとシャープが開発した技術は、人間とCCD/CMOSといったイメージセンサやマイクなどのデバイスの特性が完全に一致しない点に着目、デバイスだけが感知する領域に対しのみ反応するノイズ信号を生成させることで、撮像デバイスのみ品質を劣化させることが可能になるというもの。

人間とイメージセンサの特性の差を活用して、イメージセンサのみの部分にノイズを乗せる

共同開発では、100インチの映画用スクリーンに同盗撮防止システムを組み込んでの実験を実施。今回用いられた方式は、生体の目とイメージセンサの分光感度特性の違いに着目し、人の視覚には影響を与えずに撮影映像にのみノイズを重畳する近赤外線光源をスクリーン背面に組み込むことで、盗撮映像の品質を劣化させるというもの。映画用のスクリーンには、スクリーン背面のスピーカからの音を客席に届けるため、直径1~2mm程度の穴が無数に空いており、近赤外線光源もこの穴を介してノイズとして照射される。

試験で用いた映画盗撮防止システム

結果として、スクリーンを加工せずに、システムを組み込むことが可能なほか、人間の視覚は点滅周波数によって明るさの感覚が変化するというBartley効果に基づき光源をもっとも明るく感じる10Hz近傍で点滅させることで、妨害効果を高めている。

盗撮防止システムを用いた結果