ビデオ会議導入で何が変わったのか? システムの実稼働から半年が経過し、その効果の検証と今後の展開を考える時期に入りつつある。まず導入後に大きかったのは、月次会議やその他の定例会など、これまでになかったような"連携"ができつつあることだ。「負担にならない範囲で、できるだけのことをやる。"情報を得られた"といったメリットを得られるのが重要なこと。1大学だけでは目立たないが、そういう取り組みを行っていることで生まれるものがあるのではないか。そういう意味で"共生型大学連携"と呼んでいる」と古山氏は当初の目的を振り返る。同氏は「もともと大学同士の規模も違うため、こうした地域という結びつきで異なる大学同士が連携するということはなかった。ビデオ会議で解決される問題ではないと思うが、話す機会が増えたというのは1つのきっかけだろう」と続け、今後どのようにシステムを大学で広く利用してもらうかの活用法を検討中だという。

またシステム本稼働と同時に、大学同士が連携するためのSNSをスタートさせたという。IDとパスワードがあれば関係者は誰もが利用でき、こうしたシステムを並行運用させることで通常の連絡やビデオ会議前の用件確認などが実現できている。ビデオ会議の内容は録画され、外部からストリーミングの参照が可能だという。これにより、会議に出席できなかった大学の担当者も内容の確認が行える。録画のメリットはほかにもあり、例えば勉強会を開催した場合など、PowerPointの資料を交えて関係者であれば好きなときに再視聴が可能になっている。古山氏は「e-Learningやオンデマンド教育など、こういった仕組みを使って教育をサービスとして提供できるのではないか」と、将来のさらなる活用に期待する。

新潟青陵大学が導入した「LifeSize Room」

古山氏と三上氏が、今後のシステムに対してともに要望として挙げているのが「可搬性」の部分だ。現状のシステムは先ほどの写真のように専用ラックに大画面TVとともに収められており、移動の手間がかかる。キャスターがあるため床を転がすぶんには問題ないが、会議を行っていたセミナールームは本校舎の3階にあり、階の移動、増しては校舎間の移動は非常に難しい。もし会議システム本体が小型化し、プロジェクターに接続して簡単に利用できるようになれば、より利便性が向上するのでは、という。古山氏によれば「最近の大学は各部屋にプロジェクターが設置されていることも普通になってきており、システムのモバイル対応はたいへん便利なものになるはず」だという。そして今後システムを使って勉強会のようなセミナーを実施した場合、2面スクリーンとカメラをどのように配置するかを考えているという。たとえばセミナーの場合、カメラの1つは講師の顔にフォーカスし、別のカメラはバックボードやプレゼンテーションを映すといった具合だ。この場合、それぞれ2つあるカメラとTVをどのように使いやすく配置するかは難しいところだ。

その他の課題としては、どのように活用の幅を広げていくかという点だ。「会議予約が面倒くさいと感じるようになると、それだけでハードルが上がってしまう」と古山氏は指摘し、できるだけ気軽に利用できる体制を確保するのが重要だという。だが一方で、「誰でも使えます」といった具合にまんべんなくシステムを開放してしまうと、特定の教授がシステムを占有するような事態も発生しかねないため、「共有財産としての利用の幅を広げつつ、職員の間での活用機会もできるだけ増やしていく」といったバランスをとることに腐心しているようだ。

将来的な話でいえば、前述の連携事業が来年度末の2011年3月で終了することになっており、それまでにビデオ会議システム導入の成果を出す必要があるという。「現状では初期導入コストとランニングコストともに問題とはなっていないが、補助事業が終了した段階で改めてランニングコストの問題が出てくる。それまでに"ビデオ会議は便利だよね"と言わせるのが目的となる。補助事業が終わった後のシステムのあり方を考えるのが今後の課題」と古山氏は話す。「現状で各拠点がどこまでシステムを使いこなしているのかは不明だが、少しずつ経験値が蓄積していることは実感できる。また今後を考えた場合、ここで構築したシステムを使ってのオンデマンド教育や回線貸し事業など、新たな収入源とするアイデアもある。安価な製品や無料のプロダクトを使ってシステムを組み上げることも可能だが、ハイビジョンの設備を揃えたことで、活用の幅はより拡がったといえるだろう。そのうえでシステム選定を行った」と同氏は述べ、将来に向けた投資という点を強調している。