--Azureの課題をあげるとすればなんでしょうか
大場 先にも触れましたが、日本におけるデータセンターの設置の問題。そして、.NET、SQLといったビジネス系のビルディングブロックと、Liveのビルディングブロックとをしっかり組み合わせて、サービスとして提供できる形にすることです。もともと生い立ちが違う部門ですから、社内での統合感を強めるとともに、技術情報、ツールも、もっと統合感を強めていく。また、クラウドとして、ビジネスを進めていくときに、関連する情報を手に入りやすくしなくてはならない。成熟したテクノロジーやプロダクトについては、MSDNやTech netを通じて情報が整備されているが、クラウドはこれからです。よりアクセスしやすい形で技術情報を提供する必要があります。

平野 解決策のひとつとして、MSDNにAzureデペロッパーセンターを構築しました。これは米国本社が提供しているAzureデベロッパーセンターのサイト情報のなかから、まずはクイックスタートで使っていただけるようなコンテンツを日本語化して掲載しました。いまは、日本語だけで試してもらえる環境ができあがった。これまでは、外部のサイトの方が技術情報が多いという意見が多かったですから(笑)。我々のチームとしては、技術情報の日本語化については、かなり優先度をあげたつもりではいます。Tech Daysでの資料なども、すべてここで見ることができます。

大場 マイクロソフト全体から見ますと、過去半年間に渡り、Windows7や、IE8といった情報提供に力を入れてきた部分があります。当社の新年度となる今年7月以降からは、Azureに関するプライオリティをあげていきます。北米での商用リリースが近づくと、必然的に情報が増えますので、それにあわせて情報量が増加することになります。

平野 一方で、課題という意味では、クラウドを構築するためのコンサルティング体制も必要になるでしょう。クラウドは作り方が違います。ASP化する際に、単純にウェブ対応したことで、操作性や、レスポンスタイムで課題が発生し、ユーザーから多くの要望をもらったというISVもあります。単純なウェブ化は駄目だという苦い経験がありますから、同じ轍を踏まないためにも、我々とノウハウを共有する必要があります。複数のユーザーが共有して利用する場合や、レスポンスタイムが計算できない外側のネットワークを経由する場合があるため、常にLANで接続して使っているクラサバを前提に作ったパッケージを、そのままクラウドに持っていくには注意が必要です。

マイクロソフトでは、常にオンラインでなくても使っていただけるような細工をお願いしています。Silverlight 3が出てきて、オンラインでもオフラインでも動かせる仕掛けが用意できました。UIは、Silverlightで作っていただいて、簡単な操作環境をローカルにも置いてもらう。加えて、Live Meshを裏にかませて、データベースにリンクする形で、オンライン、オフラインを意識せずに使えるような提案もあります。ISVには、ここに注目をいただいています。

それと、マルチインスタンスをどう考えるかということも重要です。ただ、ハードルが高いと思われているところに、SQLのフルサポートを発表しましたので、マルチインスタンスを検討していたパートナー、ユーザーでも、それよりはお客様が契約単位でAzureを1個ずつ増やし、顧客ごとに専用インスタンスを増やす方が、一番安全であり、アプリケーションを改造しなくても済むという考え方ができるようになった。あとは、料金次第ですね。

一方で、弊社以外のミドルウェアを前提としたアプリケーションに対するサポートも課題です。いま活用しているシステム管理、ワークフローなどを、クラウドに持っていきたいという声があります。なかには、COBOLは持っていけませんかという声もあります。メインフレームからクラウドに持っていきたいという要望で、メインフレームから中間を作らずに、一気にクラウドにいってしまうという検討が始まっています。これも、パートナーとの連携で検証を進めています。

大場 いずれにしろ、Azureのビジネスにはパートナーとの連携が不可欠ですし、ユーザー企業との連携も重要となります。いまは技術情報の提供が中心になりますが、緊密な連携をとって、Azureのローンチにつなげたいと考えています。