--現時点での日本におけるAzureに対する反応はどうですか

大場 多くの問い合わせをいただいています。とくに、Visual Studioや、.NETで開発プロジェクトを進めているパートナー、ユーザー企業には、ノウハウをそのまま活用できるテクノロジーの継続性にメリットを感じてもらっています。また、ユーザー企業では、ITのコスト削減への期待や、スケーラビリティへの注目が高い。Silverlightに対する注目や、Windows7、WPF、マルチタッチといった機能と組み合わせた活用への期待も大きいですね。また、グリッドを検討していた企業では、グリッドのパブリック版という形で使えないかという発想もあります。SOAに取り組んできたSI企業やIT部門では、そうしたスキルの蓄積が、クラウドへの移行や共存に生かすことができますから、クラウド化にはアドバンテージがあるでしょう。ただ、そうでないユーザーも、今回のSQLサーバのサポートによって、かなりハードルが下がったといえます。

平野 例えば、旅行会社や通販会社のように、トランザクションは社内に構築しているものの、デジカメの解像度があがったり、動画が求められるようになったことで、カタログなどのデータは、いつまでも社内に置いておけないという考えがある。情報をクラウドからアップしたり、そのリソースを活用して、ビデオデータを使って、ミニファッションショーをやったりという期待も高まっています。一番入りやすいのはBtoCでしょうね。日本にデータセンターを作るのか、作らないのかといった議論を抜きにした提案が可能ですし、LIVE IDの個人認証を提供しているので、すぐにセキュアな環境を構築できる。今後、Virtual earthやメッセンジャー、友達リスト、あるいはLiveにつながるデバイスを組み合わせた提案も可能です。

大場 Azureにおいて、.NET SQLによるビジネス提案に加え、Liveとの連携を含めているのは大きな意味があります。BtoCのシナリオにおいて、Liveの様々なサービスを組み込むことは、コンシューマユーザーの使い勝手をよくすることにつながり、他社との大きな差別化にもなる。他社のクラウドは、プラットフォームにフォーカスしたものであったり、コンシューマ向け、あるいはビジネス向けサービスが中心であり、すべてをカバーしているのはAzureだけです。まずはBtoCから入り、次にeラーニングのようなBtoEとしての社内での活用。それから、BtoBという展開になると思います。

いずれにしろ、マイクロソフトがスケールの大きなクラウドを準備することに対する期待を感じています。好意的に、そしてポジティブに感じてもらっています。ただ、その先には必ず、「それで料金はどのぐらいなの」という話へ発展しますから(笑)、それに関しては、もう少しお待ちくださいということになります。しかし、SaaSやホンティング形式では、データセンターコストが高いという認識がありますから、それに対する期待を強く感じます。「ドル建てでもいいので、こんな形で作ったら、どの程度になるのか、早くその感触を知りたい」という声も多いですね。

--基幹システムの領域に向けては、かなり時間がかかると見ていますか

平野 基幹システムという点では、ユーザー企業が対応するものと、業務系アプリケーションを開発しているISVが対応するものとに2分できます。ユーザー企業が取り組むには、まだまだ時間がかかるでしょうが、パッケージベンダーのビジネス系アプリケーションを、Azureに対応するのは、それほど時間がかからないと思います。これは我々が狙っているところでもあり、いままでになかったビジネスの創出や、新規顧客へのリーチを実現してもらうという意味で、大変重要になってくるでしょう

--パートナー向けの施策は、いつごろから動き始めますか
大場 Azureはグローバルな施策ですから、そのなかで、認定パートナープログラムが始まることになると思います。日本では、現時点においては、Wipse(=ワイプス、Windows+Services Consortium)のなかで、Azureに関する分科会が設置され、そこにマイクロソフトが1メンバーとして参加し、ISVに対する技術情報の提供、ディスカッションをしています。今後、様々な形でパートナープログラムのなかにAzureが取り込まれていきますので、それにあわせてプログラムの内容を拡張していきたいと考えています。

また、私自身、この3-4か月で約30社のパートナー企業にお邪魔し、直接説明をしていますが、いま持っているパッケージやサービスのコストを下げ、信頼のおける環境のなかで、次のステップに進みたいという企業が多い。アーキテクチャーの優位性と技術評価をしていただいているパートナーのなかには、.NETのツールやノウハウをそのまま生かして、クラウドへ進むことができることをポジティブに受け止めていただいています。

平野 一方、ストラテジック・アーキテクト・フォーラムという組織のなかで、100-200のコミュニティが入れ替わり立ち替わり設置され、様々な議論が行われています。ここでの話題が、クラウドが中心になりはじめています。なかでも、新たなキーバリュー型のデータベースの扱いや、スケールアウトに関心が集まっています。

大場 日本のユーザー企業におけるアーキテクトに対しては、定期的なディスカッションを通じて、どうクラウドを見据えて、どう取り組んでいくかという、マイクロソフトの考え方を示していきます。これを担当するチームを強化し、ユーザー企業とのコミュニケーションを緊密にしていきます。