NECエレクトロニクスは4月23日、アナログ信号処理を行うセミカスタムIC「アナログマスタ」の品種拡充の一環として、CMOSプロセスを採用した8品種を開発、「CA-5シリーズ」の名称で受注活動を開始したことを発表した。量産は2009年10月より開始し、2011年度末には8品種合計で月産100万個の生産を計画しているという。
8品種の内訳は、搭載しているアナログ回路、デジタルマクロ、トリミング素子やパワー素子の規模により、高精度分野対応「Tタイプ」、高出力分野対応「Pタイプ」、通信機能分野対応「Aタイプ」の3タイプが用意、価格はオペアンプ24回路程度を形成可能で、かつトリミング素子32個、パワー素子4個、デジタルマクロ4回路を搭載した「Tタイプ μPD68223」を月産3万個受注した場合で、250円/個となる。
セミカスタムICは、あらかじめ一定比率でMOSトランジスタ、抵抗およびコンデンサなどの素子を形成したシリコンウェハ上に製造、カスタマの仕様に応じて配線を行うことにより、カスタマ固有のLSIを実現するというもの。CA-5シリーズは、従来から培ってきたアナログセミカスタム回路設計ノウハウをもとに、あらかじめシリコンウェハ上に作りこむ素子のサイズ、数、配置を最適化したことによりプロセスを従来のバイポーラプロセスからCMOSプロセスへ置き換えても、配線工程のみで高性能なアナログ回路を実現可能とした。フルカスタム手法で開発した場合と比べてアナログセミカスタムICの開発期間は従来比1/2となるという。
また、CMOSプロセスを採用していることから、スイッチ回路やデジタル回路を容易に構成できるため、シリアル通信インタフェースなどのデジタルマクロを用いることで、外部からの通信により内部回路を選択的にオン/オフすることができるようになり、ICの低消費電力化が可能になる。
さらに、トリミング素子であるポリシリコンヒューズを搭載しており、選択して溶断することでアナログ特性を調整でき、高精度レギュレータや低オフセット電圧のアンプなどを構成可能なほか、基板実装後のICのトリミングも可能であり、周辺部品を含めたアナログ特性のバラつきを調整可能としている。
このほか、8品種すべてに電流容量100mAのトランジスタを搭載。このため、数100mA出力の低飽和型レギュレータを構成でき、またオン抵抗値が2Ω程度のパワースイッチを構成することも可能となっている。
なお、同社では、これらの製品がアナログ回路の小型化・低価格化・多機能化に貢献するものと考え、これらを必要とする分野に対して積極的な拡販活動を展開することにしているほか、今回確立したCMOSプロセスによるアナログセミカスタムIC設計手法を次世代の製品開発にも展開していく計画としている。