業績好調も2009年は不透明
半導体ベンダの米Analog Devicesの日本法人であるアナログ・デバイセズは2月5日、都内で記者会見を開催し、事業方針の説明ならびに、新製品である医療機器向け電流/デジタルコンバータの発表を行った。
アナログ・デバイセズ 代表取締役社長 馬渡修氏 |
まず、同社代表取締役社長である馬渡修氏が登壇、ADIならびに同社の2008年度(2007年11月~2008年10月)のビジネス概況を語った。ADIは、コンバータやアンプ、パワーマネジメントなどのアナログ技術を中心にDSP、RFID、MEMSなどを中核技術として、それらをプラットフォームとして幅広い分野に提供してきた。そんなADIの2008年度の売上高は前年度比6%増となる25億8,000万ドル、売上総利益率も同6%増の61.10%となる16億ドル、営業利益率は同10%増の24.20%となる6億2,500万ドルであったが、馬渡氏は「夏以降に市場減速の影響を受け、売上高は当初目標を下回った」とした。ただし、「売上高が悪くても売上総利益率を上げられたことは、満足している」とした。
下段がコア技術、左が提供するプラットフォーム、右がエンジニアなどが提供する専門知識で、それらを組み合わせることで、各フォーカスマーケットでビジネスを展開していく |
ADIの2007年度と2008年度の売上高比較 |
地域別の売上高比率は北米および南米が24%、欧州が26%、次いで日本が19%、中国16%、その他アジア15%となっている。
また、日本法人であるアナログ・デバイセズの売り上げは同1%減の5億300万ドルで、「ほぼ横ばいと考えている。日本はコンシューマ製品に依存しており、北京オリンピック頃から良くなかったのが影響している」(同)とした。なお、同社の分野別売り上げ比率は、デジタルコンシューマが60%、産業が24%、通信が12%、コンピュータが4%となっており、「コンシューマへの依存が強い。今後の期待としては、コンシューマと産業+通信で50%ずつになるようにして事業の安定化を図りたい」(同)とする。
2009年度以降に関しては、「2008年第4四半期以降、カスタマの在庫絞込みが進んでおり、2009年第1四半期も期待はあまりできない。そのため、ADIでも2009年度第1四半期の業績を当初は前四半期比で20%減程度に見込んでいたものを約25~30%減に下方修正した」(同)とし、その要因として、世界経済のさらなる悪化、需要の落ち込みとサプライチェーン全体における在庫削減をあげた。
その一方、アナログ・デバイセズとしては、「5年以内に売上高10億ドルの達成を目指し、国内の外資系半導体メーカーの売上高トップ5に入ることを目指す」(同)とし、「ソフト、クオリティ、サプライなどを含めて名実ともにNo.1の"高性能アナログ信号処理"プロバイダを目指す。会社としても、アナログの世界は人材が重要と考えている。そういう人が集まる魅力のある会社にしていく取り組みを行っていく」(同)と語った。
注力マーケットを2つに分割
そして、戦略として、「ストラテジック・セグメント・マーケット」と「マス・マーケット」の2つの注力マーケットでの躍進を狙っていくとした。ストラテジックは、"デジタル・コンシューマ""オートモーティブ""産業・計測""ヘルスケア""通信インフラ"の2つの分野で構成される。これらの市場に対して「マーケットを理解している営業とエンジニアを専任部隊として投入し、カスタマの"ベスト・デザイン・パートナー"を目指す」(同)としており、特にヘルスケアはパーソナル化が今後進んでいくことが見込まれ、ワールドワイドの戦略的マーケティングチームと、地域の専門チーム、窓口の一本化などを含めたグローバルへ向けた製品開発を行うためのサポート体制を構築していくとする。
一方のマスは、1万件以上の中小規模の産業・計測・工業機器メーカーに向けて、「"ファースト・コール・サプライヤ"にふさわしいサポート体制を整備することで、カスタマとのつながりを強化するほか、Webサイトの充実や専任のサポート部隊"セントラル・アプリケーション・チーム"の設置を行った」(同)とした。また、4社ある代理店を活用し、全国にサテライトオフィスの新設・増設を図っていくという。
その代理店だが、同社の売り上げ目標10億ドルの内、将来的には6億ドル分を代理店経由のビジネスで稼ぐことを期待しており、「そのために成長分野への投資が可能な体力を持つ代理店を選択した。各代理店には当社の専任部隊を設置するなどしてもらうほか、社内でFAEの育成やシグナルチェーンでの売り込み、海外でのサポートなどを期待する」(同)とした。
CTスキャン向けコンバータ
アナログ・デバイセズ インダストリー&インフラストラクチャ・セグメント ディレクターの高田幹也氏 |
続いて登壇した同社インダストリー&インフラストラクチャ・セグメント ディレクターの高田幹也氏が、同日発表した24ビット電流/デジタル・コンバータ「ADAS1128」に関する説明を行った。
同コンバータは、128のコンバージョンチャネルをサポート、6kSpsから20kSpsの処理を実現しており、CTスキャナ向けに最適化したA/Dコンバータおよび温度センサにリファレンスバッファを内蔵した1チップソリューション。
X線が透過し辛い骨部分では信号レベルが低くなり、水部分はX線を通しやすいため信号レベルが高くなるCTの特長を生かすため、約115dBのシステム・ダイナミック・レンジを実現している。
チャネル数を増やしたことにより、スループットの向上、スライス数の増加、4D動画などに対応が可能。また、「アンプ、コンバータ、DSPの技術を統合させた結果」(同)低消費電力化も実現しており、既存ソリューションと比べ、チャネル数で4倍、処理速度で3.3倍の向上を実現しながら、チップサイズは60%の小型化、消費電力も55%減となる4.5mWを実現したという。
このため、「より迅速で、正確な診断が可能なほか、放射線の被爆量を少なくすることができる」(同)という。
現在は64スライスだが、より多くのスライスを一度に処理できるようになると、画像処理などの面でのメリットが出るほか、X線の量も少なくて済む |
また、スライス数が増えるとERなどでの診断でも活用できるようになる |
すでに量産出荷を開始しており、250個受注時の単価は192ドル(米国での参考価格)としている。