キャッシュフローは自社の健康状態を映し出す鏡

「キャッシュフローの重要性を理解できている経営者というのは、将来大きな希望を持てる方々ではないかと思います。お金というのは空気と同じであって当たり前、無くなれば経営事業体は即死します。ですから、いち早くそういった危険を嗅ぎ取っていかなければなりません。キャッシュフローを見れば、現在の企業の状態が分かります、そういった意味で、経営の生命線を司る大切な財務諸表のひとつだと考えています」と丸茂等氏。

通常、人は毎朝顔を洗うために鏡の前に立つ。そこで自分の素顔を見れば、健康状態も確認できる。企業にとっても、それは同じことなのだと丸茂等氏はいう。「つまり、会計事務所に依頼して作るキャッシュフローは最新ではないのです。月単位で締めたとしても、会計士から企業に情報が戻って来るのにどうしても若干のタイムラグが生じます。その月に(経営上の)危機感があったとしても、データを手にする頃にはその空気が希薄になります。最悪のケースでは”時すでに遅し”ということもあり得る話なのです。特に景気が悪いときは、それが顕著に現れる傾向にあります」(丸茂等氏)。

実際に、自社を映し出す鏡を見ながら経営を行っている経営者は少ない。逆に、その大切さに気づいている企業は安全で、しかも大きく成長を遂げる。「もちろん、お客様の経営状態が悪ければすぐにアドバイスをします。しかし、経営者の方にとっては、聞きたくない話もあるでしょう。私どもの話は、ひとつのフィルターが掛かるような状態になります。自分で素顔を見ることが、いかに大切かを気づいていただきたいのです。経営者の多くの方は健康のために人間ドックを受けますよね。自計化というドックに入ってタイムリーに会社の健康状態をチェックしたらいかがでしょうか」と丸茂等氏は語る。経理データからいち早く危機を感じ取ることができる最善の方法が「自計化」なのだ。

事務所でのトレーニングも実施

自計化は、確かに経営に有利な要素を多く含んでいる。しかし実際には、導入がなかなか進まない企業もある。「それは、パソコンアレルギーのお客様が多いという、単純な理由です。理解のある若い方が経営陣に加わったとたんパソコンが導入され、効果的に運用されるケースが多いのも、それを裏付けていますね」と丸茂隆氏。パソコンソフトは使いこなせない、新しいことを覚えるのは面倒だ、といったように、これまで築いてきた業務スタイルを崩したくない、と考える経営者は多い。しかし、丸茂会計事務所では、こうした不要な観念を払拭する取り組みも行っている。

「ただ単に、パソコンと財務会計ソフトの導入を勧めるだけでは不親切です。私どもは、操作に不慣れなお客様のために、事務所に来て頂いてトレーニングを実施しています」と丸茂隆氏。トレーニングの内容は、実際に事務所に帳簿を持ち込むところから始まる。いきなりすべての帳票を作成するのではなく、初回は現金出納帳のみ、2回目は銀行出納帳、といった形で、顧客の能力に合わせたステップアップ方式を採用している。「そうやって操作を覚えていただいたお客様は『思ったよりも簡単だ』とおっしゃる方がほとんどです。簿記の知識も不要で、入力すれば結果が返ってくる。ある意味、ソフトが一番の先生なのです」と丸茂隆氏は語る。