父兄の熱狂を誘うVisco For Soccer

マイクロソフト インフォメーションワーカービジネス本部 Office製品マーケティンググループ シニアプロダクトマネージャ 高田修一氏

マイクロソフトが参画する以前の記録は、紙に書き込むかたちのアナログ形式のもの。得点者やアシスト、警告、出場メンバーなどの詳細は公開されておらず、運営メンバー以外は、試合結果程度しか知ることができなかったという。

「出場した本人でさえも自分の公式記録がわからないというのが当たり前だった。公開されていないので、過去の大会記録を調べることもできなかった」(マイクロソフト インフォメーションワーカービジネス本部 Office製品マーケティンググループ シニアプロダクトマネージャ 高田修一氏)

また、スコアシートの記述法が統一されていない点も課題の1つだったようだ。

「サッカーに限らず多くの競技で共通する問題だが、スコアシートの付け方は細かい部分が人によって異なることが多い。サッカーではシュートの定義も人によって違ったりする。加えて、スコアシートは読むほうも意外と難しく、慣れるまでには時間がかかる」(大瀬氏)

そんな状況が、Visco For Soccerの導入で一変する。例えば、得点シーンの記録も、ピッチを模したビジュアルな画面上で、パスがつながったゾーンを順番にクリックしながら、ウィザードに従ってプレイヤーなどの情報を入力するだけ。すると、その結果が標準の記述方式でスコアシートに自動的に入力される。

Visco For Soccerの利用法。まずはチームを選択して選手情報を取り込む。この部分は専用のExcelマクロを用意したという

続いて会場名、気温、湿度などを入力。少年サッカーの試合では、気温や湿度に応じて給水タイムが義務付けられるのでこの入力は大切

選手のポジションを修正。ドラッグ&ドロップで変更することができる

ここまでの作業を終えると選手情報等が入力されたスコアシートが自動的に出力される

試合が始まったら、開始時間とキックオフチームを入力

ゴールが決ると、3プレイ前までを振り返って記録をとる。まずはボールに触れた場所とプレイの種類を選択

続いて、ボールにタッチした選手を選択する

最後にゴールが決まった場所を指定すればゴールシーンの入力処理は終了

試合結果は約1時間でWeb上にアップロード

マイスター シニアSE 田村慎治氏

こうして作成された記録は、日本サッカー協会関係者が待つ"中継所"にて内容を確認後、運営本部の端末を使ってMicrosoft SQL Serverへアップロードされる。「得点者や警告者から、だれが何分間出場したかといった情報までをワンクリックでアップロードすることができる。試合終了後約1時間でだれでも閲覧できる状態になる」(マイスター シニアSE 田村慎治氏)という。

大会記録は、Scorebook.jpで公開される。携帯サイトも用意されているため、父兄も会場で確認することが可能だ。Microsoft SQL ServerのReporting Serviceによる集計ページも提供されており、得点やシュート数、アシストなどを個人/チーム単位で調べることもできる。また、スコアシートをそのままイメージ化したものや、記録員が入力したビジュアルな情報(パスのつながりを示す図など)も提供されている。

「Scorebook.jp」のWebサイト

大会パンフレットには携帯サイト用QRコードも掲載された

「こうした情報公開サービスは父兄の間で大変好評。昨年は大会期間中のPVが240万にも達した。興味深いのはベスト16や32の試合がPVのピークであること。テレビなどの不特定多数に向けた報道では決勝戦に注目が集まるが、関係者向けのサイトでは反応が違うようだ」(大瀬氏)

記録が公開されることにより、思わぬ効果もいくつか生まれたという。

「コーチを務めるお父さんのひいきがなくなったという話を聞いた。だれでも閲覧できるかたちで結果が公開されているので、冷静な評価を下すようになったようだ(笑)」(大瀬氏)

試合の記録をとる国士舘大学のサッカー部員

端末は2台用意され、一方は現在行われている試合の記録用、他方は次の試合に向けた準備用として使用される

この試合では鹿島アントラーズの選手が同時に7人入れ替わり、記録員が慌てる場面も。なお、今大会の交代可能人数は7人で、一度退いた後も再出場することができる

試合後には紙に記入したスコアシートと突合せ。問題がなければUSBに保存して中継所や運営本部へ持っていく。電子データを人手で運ぶ姿を、大瀬氏は「LANではなく、RUNでデータ転送」と表現した