ITを通した貢献からラグビーを通した社会貢献へ

「なぜマイクロソフトがスポーツのスポンサーをやっているの?」と不思議に思う読者の方も少なくないだろう。マイクロソフトの企業名が紹介される機会は従来、ITやパソコンの分野に限られていた。スポーツメディアへの露出を行うことで、企業イメージの変化を図ったことは間違いない。

5年目を迎えたトップリーグは、プロ契約選手が多数いるものの純然たるプロリーグではない。かつては、チーム単位で企業のカラーを打ち出していたとしても、ラグビーの全体的なイメージを網羅するスポンサーは不在だった。トップリーグ発足と同時にスポンサードに就くことで、「○○企業の後釜スポンサー」といった印象なく新しいカラーを打ち出すことに成功した。

一方でマイクロソフトは以前から、Windowsやサーバーなどエンタープライズ部門において、社会人ラグビーで名を馳せる各企業とビジネス上の交流があった。(学生ラグビーファンなどが多い)トップエグゼクティブ同士の関係に、ラグビーが寄与することも珍しくなく、マイクロソフトの参入がプラスアルファをもたらす効果も期待できた。

キッズラグビースクールなどを全国で開催

「プロパティ上昇はもちろん、マイクロソフトと共通理念を持って大会を盛り上げたい」と話すトップリーグCOOの稲垣純一氏

記者会見に出席後、トップリーグCOOの稲垣純一氏はマイコミジャーナルの取材に対し、「ラグビーの持つ人材育成、地域貢献の理念が、マイクロソフトのビジョンと一致した」と説明した。ラグビーを世間に広めるためには、トップリーグを軸に少年世代から競技を根付かせるほかない。今季のトップリーグは「FOR ALL」というキャッチフレーズを掲げているが、教育的側面こそが不可欠だという。

24日に行われるマイクロソフトカップ決勝の前座として、関東・関西・九州の小学生チームが試合を行う。これは、マイクロソフトが特別協賛した大会を3地区で行い、優秀な成績を収めたチームが出場するというものだ。少年ラガーマンの目標となる大会を、日本のラグビー中枢である秩父宮ラグビー場で行う。彼らにとっても、24日はマイクロソフトカップをかけた戦いとなる。

このほか、マイクロソフトはトップリーグ発足後、キッズラグビースクールを全国で40回以上開催している。稲垣氏は「ラグビーは競技人口で苦戦していると言われているが、少年層はむしろ増えている。特にトップリーグチームのある地域では顕著で、3チーム(コカ・コーラウエスト、九州電力、福岡サニックス)が属する九州や、ヤマハ発動機のホームである静岡県磐田市では際立っていると聞いている」と手応えを示す。

さらに魅力あるラグビーのために

タックルの代わりに、相手の腰についたタグを取って攻撃をストップし、攻撃の面白みをクローズアップする「タグラグビー」が小学生の間で人気スポーツになるなど、上昇機運は確かにある。だが、いくら少年層がラグビーに興味を持っても、トップリーグや日本代表の活性化なくしては発展を見込めない。

「アマチュアイズムの権化のようだったラグビー界も時代の変化が訪れた。変わるべきものと守るべきものを見極めたい」と稲垣氏が話すとおり、1987年のワールドカップ初開催を機に、ラグビーはビジネス面の動きを一気に加速させた。ラグビーの母国・イングランドがユニフォームにスポンサーロゴを付けるなど、かつては考えも及ばなかった。

過度の商業化に飲み込まれてはいけないが、観戦する・実践するスポーツとしてのラグビーの魅力は積極的に発信すべきだ。昨年のW杯決勝は、南アフリカがイングランドを下し2度目の世界一に輝いた。この一戦を観戦した稲垣氏は「サッカーのようにサポーターの色分けがなされず、スタンドが一体となって試合を楽しむ光景に感激した」という。世界への波及効果と、フェアプレー精神など教育効果をマッチさせる方策を生み出すことが急務となるだろう。