Hawkins氏によると、HTMを適用した機械学習はより少ないメモリーとトレーニング時間で高い成果を見せており、過去の機械学習が直面してきた数々の問題を解決しているという。同氏は2004年にNumentaというAI(Artificial Intelligence)を研究する会社を設立し、Numenta Platform for Intelligent Computing (NuPIC)というHTMの仕組みを実装した機械学習ソフトを提供している。NuPICのトレーニングを始めた当初は、シンプルな模様の認識に数日を要していたが、今では同じ模様を15分で記憶するそうだ。特徴のあるイメージならば1秒とかからないという。

経験が反映されない従来の機械学習では、「メアリーは窓の中の子犬を見て、欲しいと思った」という文章で、メアリーの状況を正確に理解できない

同様に、写真やイラストから犬と猫を区別する簡単な作業も苦手。HTMはこれらの問題を解決する

HTMの狙いはヒトの脳の再現ではない。われわれがデータを追加し続けなくても、トレーニングや自己学習を経て効率的に自らを高め、そして予測動作に対応するシステムを実現することだ。Numentaのパートナーは、音声・ビジュアル認識、ゲーム、自律走行、ネットワーク管理などへの応用に取り組んでいるという。「より困難な問題を解決するシステムを作ろうとしている点では、高速なコンピュータ(スパコン)に挑んでいる人たちと目的は同じである」という。

今日のHTMシステムはすべてソフトウエアで実現している。ISSCCだけに、CPUやメモリーチップへのHTMの導入の可能性が気になるところだ。Hawkins氏はカスタムハードウエアがHTMの処理を向上させ、導入コストを引き下げる可能性は認めたものの、今はまだ実験的な段階であり、状況に応じて修正できるソフトウエアの柔軟性に頼らざるを得ないとした。ただし同氏は、MicrosoftのBil Gates会長が以前に「マシンが自ら学ぶコンピュータを作り上げられたら、Microsoft10社分に相当する価値がある」と述べたのを紹介し、「あなた方がこの未来、そして今後の取り組みを考えるのに、今が早すぎるタイミングだとは思わない」と述べた。