SaaSの真の中核となるのは何か?
これまでの伝統的な使われ方でのソフトの課題は、ある意味では、進化に即時、追随することが難しかったことだ。最先端の技術革新の成果を製品に盛り込み、それをエンドユーザの手元に届けるまでには時間がかかるのだから、最新版と既存版の間には差ができていたわけだが、SaaSモデルにより、ソフト自体はデータセンターに配置しておいて、単一の環境で、多数のユーザーに最新版を配布し、最良のパフォーマンスを迅速に提供することが可能になる。これはソフトの価値を最大限活かせるものであり、コンセプトとして優れている。
SaaSでは、あくまで、ソフトの価値とのセットで提供していく点を重視していきたい。SaaSを使えば、すべてが良くなるといった前提の下で、アプリケーションの優劣を議論するというのは危険なのではないか。Linuxが台頭してきた時期も、コストが低いことばかりが脚光を浴びたが、そこに何を載せるかということこそが焦点だった。オラクルはソフトベンダであり、だからこそSaaSに載せるソフトの価値が重要になる。最近はソフトの開発方法も"サービス"という考え方がベースになってきており、来年あたり、ぐっとアクセルを踏めるようになるとおもしろい。SaaSは、どこかのタイミングで、パッケージより早くブレイクスルーが起きるだろう。
「Oracle Siebel CRM On Demand Release 14」の場合、「プライベートエディション」と呼ばれる方式を追加していることが特徴だ。「プライベートエディション」は、複数のCPUで構築されるシステムを、仮想的にひとつのCPUによるシステムのよう扱えるグリッド技術を活用しており、データは、ユーザー企業それぞれのデータベースシステムで処理される図式となる。情報セキュリティの強化、高可用性につながるとともに、システム設定、セキュリティ設定など、顧客個別の多様な要求に対し、柔軟に対応することができ、よりシングルテナントに近いとされる。