SaaS導入を阻む障壁とは何か、また、その対策は?
SaaSの場合、導入を検討しているところは非常に前向きである一方、使いたくないというところはまったく消極的だ。ITについての基本的なポリシーを策定する企業は、厳格な規定をしており、新たにシステム/技術を利用するにあたり、十分な事前検証を行う。SaaSモデルは未だ認知度がそれほど高くないことから、そのようなポリシーに含まれていないことが少なくない。そうなると、IT部門の推奨がないことになる。SaaSの認知度が依然低いのは、ベンダ側の努力がもう少し必要かもしれない。
しかし、方向性としては難しい部分もある。オラクルとしては従来、SaaSを全面的に打ち出すとの方向ではなかった。当社はデータベースベンダとして、ただ単に技術や製品の機能だけを示すというよりは、顧客との対話を進めたいと考えている。SaaS型の手法というのは、手段であって目的ではないとの認識がある。ただし、企業のITシステムは、インフラ運用/維持管理のためのコストが投資の8割を占めているという現実がある。中期的に見るとと、このようなコストを圧縮できるよう、IT環境を変えていくことができるとの点では、SaaSは限りなく目的に近い手段といえるかもしれない。維持管理コストを抑制し、ビジネスに貢献できるソリューションの原資を捻出するための環境変革ということになると、SaaSの重要度は高くなってくる。
SaaSは未だ、IT業界用語とみられている側面が強い。ソフトウェアの価値そのものに対しても、国内ではあまりよく認識されていないのではないか。しかし、ソフトはいまや、IT業界だけのものではなくなっている。たとえば、テレビでも最新型の機種は、中身がコンピュータそのものということもある。機能が似通ってくるとすればメーカーは、使い勝手、操作性などで差別化を図ろうとする。となると、ソフトが鍵を握ることとなる。日本もソフトの時代だということが十分理解されれば、サービスとしても理解されるようになるだろう。