企業がERPを導入する際の目標は管理能力の強化、財務制御力の向上、組織効率の向上、協調の強化などだ。しかし、タイプの違う企業であれば、ERP導入の動機は必ずしも同じではない。

大手国有企業は近年急速な成長ぶりで、海外にも分枝機構を設立して吸収合併や再編戦略を実施、経営システムを根底から転換した上で株式上場することまで日程に上っている。この類の企業では、迅速にその業務と管理能力を向上させる必要がある。

一方、新興の国有企業はここ数年間の発展を経て一定の規模を成してはいるが、成長のボトルネックを突破しようと躍起の民営企業であれば、いち早く先進の経営マネジメントを導入し、国際競争力を高めようと考えている。また、中国国内にある中外合弁企業では、分枝機構と海外親会社との間に業務プロセスや管理の一致を確保し、バリューチェーンやサプライチェーンの整合効果を充分に発揮する必要に迫られている。

また、企業のERPに対する期待は、その業界の特長によりやや異なる。製造企業は生産材料の管理能力を向上させ、在庫水準とコストを減らし、仕入れコストの低減を狙うだろう。一方、銀行、保険、証券などの金融会社はリアルタイムで資産、負債とコア業務を監視、より有効なリスクコントロールを実現せしめ、適切なポートフォリオ戦略で業績を挙げようとするはずだ。電信、エネルギー業界ではERPの実施を通じて回収資金の管理レベルや、資産設備の管理レベルを高め、料金記入ミスによる収入の損失などを減少させようと期待する。競争の激しい小売業においては多くの企業がERPの機能モジュールを通じて仕入れコストを減らし、在庫水準と在庫費用を抑えて店舗管理能力を高め、より正確にユーザーの購買行動を把握しようとする。

中国のほとんどの企業には、業務プロセス再建に対する認識不足や執行の不徹底がある。不徹底な業務プロセス改善が、往々にして、後々手入力でERPシステムへデータを入れるなどという馬鹿らしい事態を招くのだ。こうなるとERPの予期収益も当初を大幅に下回り、ある意味では企業の元々の効率すら低下させることになる。

こうした現実にもかかわらず、中国の中小企業ユーザーはERPの型番を選ぶときは非常に慎重で、メーカーのブランド、製品価額、機能モジュールの良否など表面的な要素に徹底的にこだわる。そしてERP製品そのものの実用性に注目し、ERP製品が本当に企業業務の発展に適合するかどうか、企業の現段階や将来の潜在的なニーズに応えられるかどうか、企業に仕事の効率アップや販売業績アップをもたらし得るかなどを細かく検討するのだ。