米Appleが今春発売を開始した新型iPad (「The new iPad」)について、一部地域で同製品の広域データ通信対応モデルの名称を変更したことが話題になっている。以前まで携帯電話ネットワーク対応モデルは「iPad Wi-Fi + 4G」と表記されていたものが、「iPad Wi-Fi + Cellular」という名称になっているのだ。これは4Gの表記があるにも関わらず、キャリアによっては4Gで期待されるに満たない速度での接続しか提供されないため、ユーザーや各国政府機関からのクレームを受けたことに対処したものだと思われる。
例えば米国ではVerizon Wirelessのネットワークを利用することによりLTEのサービスを利用できるが、AT&Tの場合にはHSPA+のネットワーク利用となる。厳密にはLTE-AdvancedとWiMAX2という2つの次世代規格のみが「4G」に該当するとされていたが、T-Mobile USAが「HSPA+を4Gとする」広告キャンペーンを展開して大議論に発展した経緯もあり、現在では現行のLTEやWiMAX、HSPA+も含めて「4G」と認める決定が米国やITUで出されている。そのため、「iPad Wi-Fi + 4G」という表記自体は米国においては問題とならないと考えられる。
だが米国外においてはLTEを使ってのネットワーク接続が行えないなど、「iPad Wi-Fi + 4G」の本来の能力を期待できないケースがある。Apple Insiderの記事によれば、4月に入り英国でiPadの「4G」広告表記に関する調査がスタートしたほか、3月末にはオーストラリア政府が「広告がミスリード」だとしてAppleに対して法的措置を講ずるなど、水面下での動きが始まっていた。米国をはじめ、これら2地域のWebサイトではすでに「iPad Wi-Fi + Cellular」の表記に変更されている。5月15日現在、日本をはじめとする他地域ではまだ「iPad Wi-Fi + 4G」の表記が残っているものの、いずれ「iPad Wi-Fi + Cellular」の表記に統一されていくものとみられる。