リコー 代表取締役社長執行役員の近藤史朗氏

リコーは5月26日、2011年度(2012年3月期)から2013年度(2014年3月期)までの3年間を対象とする第17次中期経営計画を策定したことを発表した。

2010年度で終了した第16次中期経営計画では円高が想定以上に進行した結果、利益を圧迫したほか、リーマンショック以降、先進諸国の需要低迷が続くなど、市場環境が大きく変化。それに併せて、「カスタマの価値の変化がビジネスモデルにも影響を及ぼした」と同社代表取締役社長執行役員の近藤史朗氏は振り返り、それに合わせる形での構造改革(CRGP:Corporate Restructuring and Growth Project)などを推進し、2010年度には新規成長分野へのリソースシフトに着手、2011年度より本格的な展開を図るとする。

2010年度までの第16次中期経営計画の達成状況と行った各種施策

こうしたこれまでの背景を踏まえた第17次中期経営計画の3年間における市場環境は、先進国の成長の財政再建問題と景気の維持によるバラつきと新興国の高い成長による保護主義と自由貿易が並存することが見込まれる。また、ネットワーク化、クラウド化の加速による「情報化社会、知識社会、グローバル化といった大きな変化が生じる。クラウドの持つ本当の実力が発揮される時代になるはずで、そうしたネットワークの発達による在宅勤務の推進などワークスタイルも変わるはず」と社会の変革を予測する一方、人口増加や貧困、水や食料の不足、資源/エネルギー需要の拡大、気候変動などの人類、そして地球そのものの持続可能性を脅かす諸問題がより顕在化していくとの危惧を示し、そうした状況に対応するために、グループシナジーの増大や既存/基盤ビジネスの効率性の向上、新規成長分野への注力を進めることに加え、さらなるイノベーションへの挑戦が必要になってくるとした。

第17次中期経営計画のスローガンは「グローバルブランドを目指して新たなイノベーションで未来を拓く『成長』と『体質改造』の同時実現」で、CRGPをさらに推し進めたものとなる。CRGPは、新しい顧客価値を提供することで成長を実現ことを目指した体質改造こそが真の目的であり、リコーのビジネスとしても、「従来の箱物を売るという商品を軸にしたビジネスではなく、顧客本位を軸としたビジネスを実現することが大きなテーマ」とのことで、さらなるリソースの最適化や効率化、再分配を進めるという。「大企業病の大きな問題の1つはビジネスプロセスが肥大化すること。極端な例だが、100円のものを買おうと思っても、3000円もコストをかけて伝票を各部署に渡して、面倒な手間隙をかけたりという行動は非常にナンセンス。すべてに標準を作り、そこにコストをかけて維持、管理をしていくという非効率的なやり方はやめないといけない。こうした変革を提供していく機会は今後、さらに出てくる」としており、新規事業としてそうしたビジネスの変革などに対応できるサービスなどの提供を狙っていく。

そのための基本戦略は「『成長』と『体質改造』の同時実現」であり、そのためには事業の創造と集中による「新陳代謝」と高効率経営を実現するための「体質改造」が必要になるという。

顧客の価値の変化に対応し成長することを目指し、自社の体質の改造を進めていく

新陳代謝とはいうものの、複合機(MFP)やレーザープリンタ(LP)などの既存コアビジネスが今後もコアであることに変わりはないとし、それらを中心に新興国では2011年度で前年度比17%の成長を目指すが、「今までの25%減程度のリソースでこれくらいの成長をしてもらいたいと思っている」とし、人的リソースの再分配を推進する考え。具体的には、「IKONなどの買収も含め、現在、国内に4万人、海外に7万人の従業員がいる。このうち1万5000人を新規/成長領域などへシフトさせるほか、3年間でグループ全体で約1万人の人員削減を実施する」という体質改造を実施する考え、この効果により2013年度には営業利益700億円が生み出されるとする。

左下のMFPやLP、GELJETプリンタがコアビジネス。コンシューマ分野は「今後、ビジネスとの垣根が無くなっていく」との見方を示しており、同分野向けの事業成長は事業領域の拡大と並ぶもう1つのチャレンジとなるとしている

成長分野として同社が見ている事業の1つがPP(Production Printer)事業で、2010年度にはミドルセグメントで日米欧の合計で49%シェアを獲得、この販売、サービス体制の再編、強化、拡大を実施するほか、商品ラインアップを拡充。ライトセグメント向けに2011年度上半期に新製品を投入するほか、ハイエンド向けにも将来的に製品投入を図っていく。

一方の新規分野としては、さらなるイノベーションへの挑戦として、ネットワークアプライアンスやLED照明などのエコソリューション、そしてTAMAGOタスクフォースのようなインキュベーションプロセスの強化が挙げられる。特にネットワークアプライアンスはハードウェアを売ることを前提とするのではなく、クラウドとリアルをつなぐもの、として、新しい価値を提供する1つの道具として提供を図っていくとする。

オフィスでの紙の使用はデジタル化で減ると言われつつも、実際のところ減ってはいないが、そうした状況がいつまでも続かないというのが同社の見方。そうした時代において、OA機器を活用してもらう鍵となるのがクラウド化であり、各種の機器をクラウドの窓口として活用してもらうサービスなどを志向していくほか、グループ内のファイナンス会社を活用して、顧客が機器を持つのではなく、活用するという方向へのシフトをグローバルで進めていくとする

こうした施策により、2013年度までにMDS(Managed Document Service)およびITサービスと各種新規事業を中心に成長を図り、2013年度通期の売上高2兆4000億円を目指す。また、CRGPの利益創出効果で1400億円、震災影響からの回復100億円を2010年度の営業利益601億円に積み増すことで、2013年度には営業利益2100億円を必達目標とする。これにより、営業利益率は8.8%となり、「リーマンショック以前の状況に何とか戻したい。我々は勝つまであきらめずに攻撃を仕掛けていく」ということを強調した。

業務再構築は、本社含めて聖域なく行っていく方針。それに併せて国内外の拠点や販売体制の有り方、生産拠点の配置なども見直される。また、購買機能の効率化という意味では、多くのルールやスタンダードがあるために、自縄自縛となっている状況を鑑み、より柔軟な対応を目指すとする。そして、人員リソース。約1万5000人を配置転換するほか、約1万人の削減を行う方針を示している